マスク生活で「耳疲れ」が急増…補聴器メーカーが伝えたい、耳との付き合い方
イヤホンやヘッドホン、スピーカーなどオーディオ機器の進化がめざましい昨今。さらに、ストリーミング配信が浸透したことで音楽や動画を、場所・時間を問わず自由に楽しむことができるようになった。
しかし、それは耳を休ませる時間が減少しているとも言えるだろう。また、マスク生活やリモートワークなど、コロナ禍によって変化した生活様式も耳の酷使に繋がっている。
デンマークの老舗補聴器メーカー・GNヒアリングのマーケティング部でオーディオロジーマネージャーの藤垣均氏とマーケティングコミュニケーションマネージャーの野口日登美氏に、コロナ禍での耳トラブルなどを中心に話を聞いた。
マスク生活で難聴と近い症状に
藤垣氏によると、コロナ禍で物理的に距離を取る必要が生じ、またマスクや飛沫防止のパーテーションが出現したことで聞こえ辛さを感じる人は増えたという。
「耳鼻科の医師に聞き取りをおこなったところ、2020年に緊急事態宣言が発令され、その2~3か月後には患者が急増したことが分かりました。
その結果を受けて2020年に弊社が行った調査では、マスクやパーテーションがあると低音の聞こえ方は変わりませんが、2000ヘルツ(音域)以上の高音が聞こえ辛くなっていることが分かりました。すると子音が聞こえなくなって言葉のメリハリとなる要素が欠落し、こもって聞こえてしまいます。本来なら老人性難聴で現れる症状に近い状態が、マスク生活で再現されているのです」(藤垣氏)
「聞こう」という姿勢が疲れに
コロナ禍でリモートワークの機会が増えたことは、特にオンラインミーティングに不慣れなミドルエイジ層に影響があったようだ。
「弊社が行った調査によると50~60代で『コロナ禍で聞き取りにくさが増えた実感がある』と答えた人が約63%。さらに『聞き取りにくさを感じる場面』について聞くと『オンライン会議』と答えた人が経営層で30%、一般・管理職の方は17.5%という結果が出ました。
もちろん、加齢で聴力が低下していることも関係しているのでしょうが、周囲の環境で聞きやすさが左右されるオンライン会議だからこそ、聞き取りにくさを増幅させているのでしょう。ガヤガヤした場所で会議をすることで聞き取り辛くなり、パソコンやイヤホンの音量を上げる……。それが耳への負担になるという悪循環を生むこともあります。
また、難聴の方は『一生懸命聞かないと』という思いから、一日の終わりにどっと疲れることが多いのですが、オンライン会議でも似たような状態となります。オンライン会議で相手の声を必死に聞き取ろうとし、終わった頃に疲弊した経験はありませんか?」(野口氏)