怪獣の身体になってしまった男の物語

『怪獣8号』
作者名 ：松本直也
出版社：集英社

『怪獣8号』

　街に現れ、人々を襲う“怪獣”を討伐する防衛隊員を目指していたはずが、討伐された怪獣の後処理をする清掃員として働く主人公の日比野カフカ（32）。謎の生物に触れたことで体質が変化し、討伐される側である怪獣の身体になってしまいます。

　自分の体に起きたことを隠し、かつて諦めた防衛隊員への入隊を目指しますが、入隊審査中の仲間のピンチに思わず怪獣化してしまい……。

　かつて夢破れた男が、再び夢を掴もうとする物語。主人公の32歳という設定が絶妙です。社会人としての人生が軌道に乗り始め、これから新しいことを始めるには遅すぎるのでは……と、つい自分に言い訳をし、挑戦することから遠ざかりがちな年齢ではないでしょうか。「今が人生の一番若いとき」とよく言いますが、何歳になっても夢を追いかけることはできる、と思わせてくれる作品です。

自分らしく生きるには？早くも話題に

『ジーンブライド』
作者名 ：高野ひと深
出版社：祥伝社

『ジーンブライド』

　2022年1月現在で1巻しか出ていませんが、早くも話題沸騰中の『ジーンブライド』。本作では性別が女性であるというだけで（男性よりも）不便さを感じたり、不利な状況に立たされたりすることが多々ある世界を描いています。同じことを言っても男性と同じようには相手に言葉が通じなかったり、会話の本筋とは関係のない容姿や年齢の話を唐突に持ち出されたり……。

『ジーンブライド』は、女性視点での生きづらさを描いた物語ですが、人が自分の思うように社会でふるまうことができずに、もどかしさを感じる原因は、実生活では性別だけにあるとは限りません。見た目、年齢、肩書きなど、世の中にある多くの偏見や決めつけが、本人の意思とは別に、固定化した役割を与えてしまっていることが多々ありそうです。

　そうした現実を見つめなおし、より誰もが自分らしく生きるにはどういう世の中にすべきか？ ということを考えさせられるマンガです。

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　以上、2022年に注目のお仕事マンガ4作品を紹介しました。働くうえだけなく、生活していくうえでの視野を少しだけ広げてくれるヒントや、前向きな気持ちで過ごせるような考え方など、新たな知見をくれるはずです。

＜TEXT／総合電子書籍ストア「ブックライブ」 西村 葵＞