コロナ禍で危機の劇場を「配信で支える」。ベルリン銀熊賞受賞Pに聞く、仕事のこだわり
プログラマー経験が役立ったこと
――プログラマーの経験が映画作りに活きたことはありましたか。
高田:映画業界のルーティンワークとして映画の制作から宣伝をマクロの視点から見ると、惰性で同じことを繰り返している無駄な部分もあります。そして、それがテクノロジーを使うことによって劇的に効率化されることもあるんです。
またクラウドファンディングや配信、あるいはデジタル上映技術の仕組みなどが身近なものとして理解できるため、多少役に立ったと思います。小さな例では『偶然と想像』のスタッフの間では、当時そこまで拡がっていなかったSlackを導入したり。
「全部の現場で導入したらいいのに」とスタッフの一人が言うぐらい便利だったと聞いています。
「やりたいことをやる」の先にあった受賞
――「映画は作れないと思っていた」とのことでしたが、結果として映画プロデューサーになりました。
高田:好きなことを仕事にしているという自覚はありません。目の前に仕事がたくさんある中でたまたまやっていて苦にならないものがあったという感じです。やった後に達成感がある、面白いと思うことがたまたま映画の仕事だったということです。
普段はプログラマーをしていますが、プログラミングをして、ソフトウェアができあがることも同じぐらい達成感があり、面白いと感じています。プログラマーになっていなければ、趣味でプログラミングをしていたかもしれないし、映画を作っていなければ、写真を撮ったり、iPhoneで動画を撮っていたかもしれないですね。
映画は自分にとって季節商売みたいなもので、そちらに集中しなければならない時はそれが大半の時間を占めます。それ以外はほとんどITの仕事をしています。
自分にとっては、「やりたいことをやる場所をつくる」というスタンスで始めたことが、結果としてベルリン国際映画祭という大きな舞台で銀熊賞(審査員賞)をいただけたことが驚きでした。コンペティション部門に入れて頂けたこと自体が驚きなのに、こんなに大きな評価を得るとは予想もしていなかったです。
これからも、IT企業の経営者と並行しつつ、プロデューサーとして監督や出演者、スタッフが映画作りに集中できる環境を作って行ければいいなと思っています。