23歳学生作家、虫をこよなく愛する彼女が“好き”を仕事にできた理由
――やっぱり虫の問題は強いんですね。そもそも虫を好きになったキッカケは覚えていますか?
篠原:物心つく前から人一倍、虫が好きで、ひたすらダンゴムシを集めて筆箱の消しゴムケースに入れていました。
子供のときから虫が嫌いな人ってそんなにいないと思うんです。年齢を重ねるにつれて、“虫は気持ち悪いもの”だという固定観念を得てしまって、嫌いになる。
私の父が栃木県の田舎出身で、家族で昆虫採集に行ってばかりだったので、私は虫を嫌いになるキッカケがなかったです。
虫はやっぱり全般的に好きです
――たしかに虫のフォルムや動きが嫌いっていうのに客観的な根拠はなくて、あくまでも人間が主観的に毛嫌いしてるだけですね。
篠原:そうなんですよ。正確には昆虫ではないですが、ゲジゲジが無害なのに嫌われているのは、単に生理的に気持ち悪いからですよね。
そういう生理的嫌悪をもたらす昆虫は“不快害虫“といいます。ゴキブリは衛生的な問題もあるので、害虫と不快害虫のボーダーに位置する昆虫ですね。
――篠原さんは、嫌いな虫、苦手な虫はいるのですか?
篠原:実はカマドウマとコオイムシっていう水生昆虫が苦手です。カマドウマが苦手なのは単純にトラウマで、小さいとき靴の中に入っていた2匹のカマドウマを素足で踏んでしまったから。
コオイムシ(※閲覧注意)は純粋に見た目が苦手で、メスがオスの背中に卵をびっしり産みつけるんですけど、私、つぶつぶしたものがダメなんですよ。
――タガメの卵みたいな感じですか?
篠原:そうですね。あれよりも小さくて縦長の卵がみっちりとオスの背中にあるのが、ダメなんですよ。でもこれは虫が苦手というよりも、つぶつぶの卵がダメという感じですね。だから虫はやっぱり全般的に好きです。
――いちばん好きな虫ってなんですか?
篠原:断然、オオセンチコガネです! 金属光沢のあるコガネムシで、緑とか紫とかいろんな色を持った種類がいるんですけど、そのなかでも青色のルリセンチコガネが大好きで。
――(スマホで確認して)人工的というか、生き物っぽくない色味ですね。
篠原:そうなんです。オオセンチコガネは糞虫なんでフンを食べるんですけど、それでいてこの美しさを得ているというギャップがたまらなく好きなんです。わざわざ奈良公園に捕りにいくんですよ。
――奈良まで行かれるんですか!
篠原:奈良公園はパッと見、よくある公園ですが、そんなところに明らかに異質な、女性が落としたアクセサリーみたいなピカピカのオオセンチコガネがちょこちょこいるんですよ。
色彩に光沢がある理由としては、太陽光や景色を反射して外敵から身を隠すためとか、毒がありそうな警戒色で外敵を遠ざけるとか諸説あります。私としては自然の中で進化することで異形になってる感じが好きです。
――『昆虫最強王図鑑』(学研プラス/児玉智則・監修)という気合の入った本で監修をされていますが、強い虫もお好きですか?
篠原:強くてダイナミックな虫も好きですけど、特定の虫にだけピンポイントで強い虫にもグッときますね。あと、昆虫って大半が1センチ以下の微小昆虫なんですね。顕微鏡で見ないとわからないような差異があるところなんかも愛おしいです。