ベーシックインカムで救われるか?コロナとAI失業の“W危機”で困窮者が増加
「毎月7万円の支給」を提案する
続けて、「新しい価値観にアップデートしていただくか、そういった価値観を持った人に私たち国民が投票するしかありません」と改善策を語った。
政治家だけでなく、勤労を美徳とする風潮は根強く、ベーシックインカム導入のネックになりそうだが、「勤勉に働くことが良しとされたのは近代独特の現象です。古代ギリシャでは労働は奴隷の役割だったため、市民からは嫌がられていました」と話す。
「私は『人間はもっと怠けて良い』と思っています。固定ベーシックインカムとして7万円という給付額を提案しましたが、当然7万円では生活できません。ですが、7万円毎月もらえれば無理してフルタイムで働く必要はないです。ブラック企業に使い倒される心配もなくなり、なにより心が穏やかになります」
井上氏にベーシックインカムの道筋を示してもらったが、私たちはそろそろ「頑張って働かないこと」を前提にした社会を目指しても良いのではないだろうか。
<取材・文/望月悠木>
【井上智洋】
経済学者。駒澤大学経済学部准教授。慶應義塾大学環境情報学部卒業。IT企業勤務を経て、早稲田大学大学院経済学研究科に入学。同大学院にて博士(経済学)を取得。2017年から現職。専門はマクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論。著書に『人工知能と経済の未来』(文春新書)、『ヘリコプターマネー』『純粋機械化経済』(以上、日本経済新聞出版社)などがある