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30歳で海外起業した日本人美容師。接客は「あえて強めの態度」という異国事情

ビジネス

2年でスタッフが辞めてしまう問題

サロン

アットホームな雰囲気のHikari Salonの店内

 そして2009年。30歳になってすぐの里永子さんは美容室「Hikari Salon」をオープンさせた。ロンドンに渡り6年後のことだった。しかし、憧れていたロンドンで経営者となりすべてがうまくいった……わけではない。「日本とイギリスの労働に対する価値観の違いに苦労した」と里永子さんは明かす。

「一番大変だったのは、スタッフを定着させることです。日本だと、1度入社したら長い期間勤めようとする傾向があるじゃないですか。でもイギリスでは2年間で職場を変えるのは珍しくない。むしろ、職場を変えず同じ場所で長く勤める人は、向上心のない人と思われる傾向があります。

 でも美容師はお客様がベースなので2年ごとにスタッフが変わると、いつまで経っても忙しくなっていかない。スタッフにここで働きたいと思ってもらうのに必死でしたね」

 現在の「Hikari Salon」には、それぞれ国籍の違う7人のスタッフがいる。長い期間働いているスタッフも多く、「人に恵まれている」と里永子さんは言う。元スタッフの中には今ではパリコレで活躍したり、ヴィクトリア・ベッカムや、ワン・ダイレクションといった一流アーティストを担当したりする美容師たちもいる

海外へ出て躍進する人の共通点とは

「ロンドンはどこにでも成功の扉があります。ただその扉を開くかどうかは自分次第です」。ここでふと、海外へ出て躍進する人に共通点はあるのだろうか、と気になり聞いてみた。

「そうですね。共通しているのは『意志は強いけど謙虚』なこと、ですかね。あとは小さな仕事や掃除ひとつにしても一生懸命で、常に仕事を探し、人を助けようとしている人は、職種を変えてもうまくいくなと思います。反対に、海外に出てきただけで『自分はすごいんだぞ!』となってる人、『俺はスタイリストだ。こんな仕事は俺の仕事じゃない』と傲慢なタイプの人とは……、一緒に働きたくないですね(笑)。

 私がロンドンで今も美容室を続けられているのは、自分の力だけではありません。周りのスタッフや家族、お客様が支えて助けてくれているおかげです。本当にありがたい日々を送れています」

 ゼロからはじめたロンドンで、起業する扉を開けて12年。里永子さんの次なる目標は、日本への出店だ。「人を大切にする」その信念と攻めのスタイルを貫く里永子さんの新たな扉が開いた。

<取材・文/早川きえ 画像提供/レイ里永子、Hikari Salon>

【レイ里永子】
1978年、福岡県生まれ。フランス人経営の美容専門学校に通い、福岡の天神にある大手美容室に入社。24歳で渡英。南部にあるウィンチェスターの美容室でアシスタントとして働き、30歳で自らの美容室「Hikari Salon」をロンドンにオープン。

北スペイン在住ライター兼美容師。語学力ゼロで海外へ。美容師として4カ国で働く。マルチ・ポテンシャライトな働き方を実践中。趣味はボクシングと美味しいキムチを漬けること。
Twitter:@carmeri2

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