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30歳で海外起業した日本人美容師。接客は「あえて強めの態度」という異国事情

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ロンドンで学んだ日本と真逆の接客ワザ

 イギリスに渡ったはいいが、まったく英語が話せなかった里永子さんは、語学学校に行きながらイギリス南部にあるウィンチェスターの美容室でアシスタントとして働きだした。日本では稼ぎ頭のスタイリストだったが、イギリスに渡ったころはシャンプーや雑用をこなす日々を送った。英語をある程度話せるようになるまでは、失敗も多かったと語る。

日本の感覚でマッサージをしたら『痛い!』とクレームを言われたこともあります。『力加減は、大丈夫ですか?』と英語のフレーズを覚えても、お客様の返答が理解できなくて、あたふたしてました」

 失敗を重ねながら経験を通し、日本とイギリスの接客や価値観の違いを学んでいった。そんな里永子さんには、自身で決めたちょっとした接客ルールがある。

「イギリスでは、お客様に対しペコペコしすぎると『この人自信がないんだ』と思われてしまいます。あえて強めの態度のほうが経験があると思われ、安心されることも多い。私は『ハイクラスで周りからチヤホヤされ慣れていて細かくうるさいタイプ』の方には、上から対応するようにしています。『嫌なら帰ってもいいですよ』くらいの感じで」

海外で生き残っている人の特徴

サロン

里永子さんの作品。ロレアル主催の歴史あるコンテストで、2年連続ロンドン代表としてファイナリストに選ばれた

「言葉で説明するより技術で見せる。逆に、『やさしく気の弱そうなタイプ』のお客様には、それ以上に頭を低く接客するようにしています。実際、海外で生き残っている人は、自分の意見をはっきり言える人が多いと思いますね。『はい』ってなんでも言うことを聞いてしまう良い人タイプは、この国じゃやられてしまう。へし折られて帰ってしまう人もいます。コーヒー屋さんにお客として行った時でさえ、ペコペコしているとぞんざいに扱われることもありますから」

 その後、何軒かの美容室で働き、英語にも慣れてきたころ、ビザの更新が近づいていた。「日本に戻るか、ロンドンで活動するか」悩んでいた矢先、当時付き合っていたイギリス人である今の夫と結婚が決まり、ロンドンで腰をすえる覚悟をする

「今に自分のお店を持ちたい」と日本にいたころから資金を貯めていた里永子さん。渡英してからも安い給料をきりつめ、コツコツ夢に向けて貯金したという。「当時働いていた美容室を早く辞めたいと考えていた時期でもありました。スタッフを使い捨てのように扱うオーナーの方針に嫌気がさしていて。でも他人の店は変えられない。それならもうお店を出してしまおうと思いました」。

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