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東京五輪は最高か、最低だったか?忘れられた「当初の理念」を振り返る/常見陽平

ビジネス

民間レベルで評価すべきだった取り組み

河村たかしTwitterより

河村たかしTwitterより

 菅総理だけではなく、例の“金メダルかじり問題”を巻き起こした愛知県名古屋市の河村たかし市長など、オリンピックを通して政治家のリーダーシップにはやはり疑問が残った。一方で、選手と共に民間レベルのオリンピックにからむ取り組みでは、評価されるべきものがあった。

 コロナ下での開催に対して、CM辞退で自社のスタンスを示したトヨタは、先述の河村市長に対しても「アスリートへの敬意や賞賛、また感染予防への配慮が感じられず、大変残念に思う。河村市長には、責任あるリーダーとしての行動を切に願う」と、社長名義で抗議文を出していた。

 そもそも、市長の元へ表敬訪問した女子ソフトボール日本代表のメンバー・ソフトボールの後藤希友投手が自社所属であったからこその抗議であったが、はっきりと主張したのは素直に感嘆した

客観的な事実を開示して振り返りを

 また、ラグビー部の暴行事件などで世間を騒がせ、最近も付属病院の建て替え工事における背任疑惑で揺れている日本大学が五輪閉幕後に新聞に掲載した広告も、なかなかのサプライズだった。五輪開始時には「スポーツ日大」という広告を、五輪終了後に出場した現役生、OB・OGを称える広告を掲載していた。

 そして、私たちが熱狂していた裏では、ボランティアはじめ不眠不休で大会を支えていた“裏方”の人びともいた。日本の悲喜こもごもが垣間見えた東京2020オリンピックであったが、興奮した日々の余韻もたしかに残っている。

 可能な限り客観的な事実を開示していただき、振り返りを行いたい。「やっぱりやってよかった」では終わりたくないのである。選手や関係者の汗や涙を称える意味でもだ。実はコロナに向き合った最高の五輪だったかもしれないし、最低・最悪の五輪だったかもしれないのだ。この高い授業料を無駄にしないためにもだ。

<TEXT/千葉商科大学国際教養学部准教授 常見陽平>

働き方評論家。千葉商科大学国際教養学部准教授。1974年、北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業、同大学院社会学研究科修士課程修了。『社畜上等!――会社で楽しく生きるには』など著書多数
■Twitter:@yoheitsunemi

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