パン屋なのに忙しくない。32歳“元数学教員”店長の「プライドレス効率化経営」
売り上げを変えずに休みを増やす
私立高校の先生を3年経験した28歳の時に、融資を受けられるタイミングもあり独立。「アルテの食パン」をオープンした。教員時代には、ほぼ定時に帰るように仕事を効率化していたが、独立してからもさらにアップデートしている。
「開店当初は10時オープン。週に1回休みを取るというスタイルでしたけど、どのタイミングだったら休んでもお客さんに迷惑をかけずに大丈夫か統計をとり、最終的に11時開店になりました。それでも朝7時半からパンを焼いています。休みを増やしても売り上げが落ちたら意味がないので、ラインナップの見直し、単価のアップ、そしてお客さんの選別をしています」
はて、お客さんの選別とはどういうことだろう。
「楽しそうにたくさん買ってくれたお客さんと全然楽しくなさそうに渋々500円しか買わない人。同じ対応だったらおかしいでしょ(笑)。雨の日でもわざわざ来てくれる方、そういう方も本当に大切しなくちゃいけない。だから大切に思ってくれるお客さんにはできる限りいい対応をしている。すると、いいお客さんがまた新しいいいお客さんを紹介してくれます」
生地に添加物不使用でも、常温で1週間保存
そうはっきり長山さんが言うのは、パンの美味しさに自信があるからだろう。オープン当時ベンチマークとしたお店は、銀座の「セントルザ・ベーカリー」。試行錯誤の末、現在は高級食パン専門店と普通のパン屋さんの中間ぐらいを行くお店を目指したラインナップになっている。
材料や発酵方法などのパンの配合も数学的にパズルのように考えている長山さん。「時間の無駄がパンの質を変える」と、いかにパンの質を落とさず、短時間で作るか、常に実験と研究を欠かさない。
今までビタミンCの使用だけだった添加物も、開店から4年も改良した結果、パン生地には一切添加物不使用。「パン屋さんに行くのはせいぜい週1回でしょう」と常温で1週間保存の効く美味しいパンになっている。