出前館が147億円赤字に。売上増、LINEが出資、でも不安視されるワケ
メルカリが同様のケース
さて、ここまでくると経営状態が気になるところですが、財務の安定性は「(1)2021/8期の赤字が想定内の範囲であるかどうか」「(2)投資が将来の収益につながるか」にかかっています。
(1)に関していえば、2020/8期の決算発表で21/8期の業績を「売上高280億円、営業利益-130億円、最終利益-130億円」と想定しており、初めから想定済みであることがわかります。第3四半期ですでに予想の赤字額を超えていますが、問題ない範囲と言えるでしょう。
(2)に関してはUberEatsとのシェア争いが気になるところです。市場シェアが公表されていないため具体的な比較はできませんが、様々なアンケートによると利用者数は僅差とみられており予断を許さない状況です。前述の2020/8期に取得した資金があるためもう1年は同じ規模の投資が可能です。しかし、LINEが収益化まで出資し続ける可能性もあるとはいえ、2022/8期に収益化できなければ規模を縮小せざるを得ないでしょう。
同様のケースではメルカリが参考となるかもしれません。2018/6期から2020/6期まで売上高は2018年:368億円⇒2019年:517億円⇒ 2020年:763億円と上昇し続けている一方で、営業利益は2018年:-44億円⇒2019年:-121億円⇒2020年:-193億円と赤字幅は拡大しています。しかしながら新株の発行で現金を増やしており、株価もコロナ禍では上昇傾向にあります。
赤字成長戦略は吉と出るか…
出前館においても素早い収益化、もしくはさらなる株の発行によって現金を取得できれば問題ないと言えそうです。一方で収益化が見込めず投資も受けられなければ広告宣伝費、人件費を確保できなくなるため、少ないシェアで細々と展開するしかなくなるでしょう。
もともと成長していたデリバリー市場はコロナ禍でさらに拡大。そして、著名芸能人をつかったCMを展開し、規模拡大を目指す出前館も急激に利用者数を伸ばし、売上高を増加させましたが、果たしてアマゾンやメルカリのような赤字成長戦略を描けるか注視したいところです。
<TEXT/経済ライター 山口伸>