東京五輪でホームレス“追い出し”も「生活苦の20代の相談が増えている」
新型コロナウイルスの流行以降、国内の経済が停滞し、雇用や就業に大きな影響を与えている。総務省が発表した2021年5月の完全失業者数は211万人となり、16か月連続で増加。前年同月比では13万人も増加している。
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こうした状況下で増えているのが、生活困窮者だ。コロナ禍で仕事を失い、生活に苦しむ人が後を絶たない。中には家賃が払えずに家を失って、路上生活を送る人も出てきている。
「オリンピックをあてこんで景気がよかったときは、派遣や日雇い仕事もたくさんあって仕事を選べたんですよね。でもコロナになって一気に仕事がなくなり、生活困窮者やホームレス状態の人が増えていると感じます」
そう話してくれたのは、特定非営利活動法人「TENOHASI(てのはし)」の代表理事・清野賢司さん(59歳)。TENOHASIは2003年に発足し、池袋周辺で生活困窮者やホームレスへの支援を続けている団体だ。生活困窮者支援の最前線にいるTENOHASIは、コロナ禍でどのような活動を行っているのだろうか。また、現場ではどのような変化が起きているのか、清野さんに話を聞いた。
コロナ禍で生活相談が激増
TENOHASIの活動の柱は、毎月第2・第4土曜日に東池袋中央公園で行われている“炊き出し”と、毎週水曜日に池袋駅前公園でおにぎりと支援情報を掲載したチラシを配布する“夜回り”だ。清野さんはこうした活動を通して、コロナ禍での生活困窮者増加を肌で感じている。
「リーマンショック直後は炊き出しに400人以上が並ぶときもありましたが、その後は徐々に減って『もうあんなことはないだろう』と思っていたんです。でも、今はそれに近い状態になりつつあります。先日は雨なのに炊き出しに380人ほど並んでいたので、これから一体どうなるんだろうと思います」
また、炊き出し・夜回りの現場や、豊島区・要町にあるTENOHASIの事務所では、生活保護の申請や就労に関する相談なども行っている。昨年から、生活相談者の数もかなり増えているそうだ。
「2020年は相談者が約300人になりました。2019年は約130人だったので、年間で約2倍以上に増えたことになりますね。2021年は4月、5月の相談者数が30人だったので、年間360人を超えるペースになっています」
20-30代の生活相談者が増えている
コロナ禍で目立つのは、相談者数の増加だけではない。相談者の年齢層にも変化があらわれている。
「いまは相談者の若年化が進み、20~30代の方が増えてしまいました。相談者の中には、知的障がい、発達障がい、うつ病など、何かしらの『生きづらさ』を抱えた人が多く、学歴の低い方、児童養護施設出身者も多いです」
コロナ不況によって、就業スキルがなかったり、心身に不調をきたしていたりする人は、仕事の確保が難しくなった。知的障がいや発達障がいなどの障がいを抱えている場合、役所の担当者とうまくコミュニケーションが取れず、適切な支援を受けられないまま国や自治体に放置されてしまうこともある。こうした人々は、誰にも救いを求めることができず、生きるための“最後の手段”として路上生活を選んでいる。