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「成長しなくちゃいけない」重圧を描いた漫画が話題に。原作者に聞く、若者に伝えたいこと

暮らし

 コスパ、生産性、オンラインサロン……。もっと自分を高めろというプレッシャーがあふれる現代。成長し続けることを求めて苦しみながらも、そこから抜け出せない状態を「成長教」と名付け、リアルに表現した作品がSNSを中心に大きな反響を呼んでいます。『夫は成長教に入信している』(原作・紀野しずく/漫画・北見雨氷)では、仕事で成長することに囚われ「成長教」に入信してしまった会社員コウキを、妻ツカサの目線から描いています。

成長教

『夫は成長教に入信している』©紀野しずく・北見雨氷/講談社

 コミカルながらも赤裸々で切実な描写に、思わず共感してしまう本作。今回は、原作者の紀野しずくさん(@kino12kino3に作品について、若手ビジネスマンを取り巻くプレッシャーについて語ってもらいました。

「実話?」といった声も多い

――あまりのリアリティにSNSでは「これは実話?」といった声も寄せられています。作品には、ご自身の経験も反映されているのでしょうか?

紀野しずく(以下、紀野):「成長教」はフィクションとして描いています。作中のネタは、周囲のハードワーカーの方たちから、ヒアリングをして集めています。

――仕事で「成長」することに囚われている主人公コウキを、家族、家庭の目線から描いているのも興味深かったです。

紀野:身近な人が成長教に入信することによって起こる周囲への影響は大きいかなと思い、家族の視点から描こうと決めました。

――多くの人々を蝕む「成長し続けなければいけない」という呪いは、どのような社会背景があると考えますか?

紀野:あらゆる媒体を通じて、頑張っている人、活躍している人の存在がリアルタイムにわかること、勉強しようと思えば情報はどこからでも手に入ること。それが「どこまでも諦めてはいけない」「成長しろ」という社会からのメッセージに聞こえるのかもしれません。特に新社会人の方は「圧倒的に成長できる会社」など、初めて入社した会社から発せられるメッセージに応えようと過剰適応してしまうかもしれませんね。

成長教は呪いのような存在

紀野しずく

紀野しずくさん ©︎北見雨氷

――どのような人が成長教に入信しやすいと思いますか?

紀野:成長教に入りやすい方は、騙されやすいというより、むしろ真面目で責任感があって、真摯に物事に取り組める方だと思います。

――作中ではあえて使わないようにしていると感じるのですが、いわゆる「意識高い系」という言葉にはどう感じますか?

紀野:まず、「成長教=意識高い系」として描いているつもりはありません。意識高い系という言葉の定義自体がそもそも曖昧とも思いますが……。私のイメージでは、意識高い系は仮に表面的ではあっても、プラスアルファで自分を高めていくという前向きさが感じられます。一方、成長教は「こうしなければいけない」という強迫観念というか、もっと切実で心身を蝕む呪いのような存在なのかな、と考えています。

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