「人の心理を操れる」メンタリズムの真相。アジアNo.1メンタリストが徹底解説
メンタリストが最も重要視する「場の支配」
メンタリズムとはトリックと心理術の融合であることがわかったところで、では、なぜ人々はメンタリストがあたかも凄い力があると感じてしまうのでしょうか?
それはパフォーマンスを絶対に成立してしまうトリックに、実践型の心理術があるからこそと今までの説明で理解できたと思いますが、しかしそれだけではありません。実はさらにこの双方を成立させるために必要なものがあります。それが「場の支配力」です。場の支配力を付けることで、メンタリストは特有の世界観を作り出します。
なぜ場の支配力が必要なのか、それはその場の空気を掌握ができていないと、その人の存在を軽く見てしまうからです。例えばあなたが何かのプレゼンを聞いている際、そのプレゼンターがやたらと緊張していたらどう感じるでしょうか? 「このひと大丈夫かな」と感じてしまうのではないでしょうか。
逆に自信たっぷりにプレゼンをしている人であれば安心できるはずです。プレゼンの内容は同じだとしても、その人が緊張しているのか自信を持っているのかの違いで、こうも印象が違うことを考えれば、その場を支配することの重要性が簡単にわかると思います。メンタリストに限らず、ビジネスパーソンであればこの支配力は必要不可欠だといっても過言ではないでしょう。
ではこのような支配力を身に付けるにはどうするのか、その中心となるものが「脱力感」です。脱力をしていると人は緊張から解放され、しかも視野が広がります。人は視野が極端に狭くなるときはどのような状態かご存知でしょうか? それはパニックになっているときです。極度に緊張するとあっという間に周りが見えなくなります。その反対が脱力です。成績が良いアスリートたちの最大の特徴は、この脱力感といってもいいでしょう。
見せるのは現象ではなく「世界観」
もうひとつ大事なこと、それはどのような世界を相手に見せるのかです。
たとえば日本におけるメンタリズムは心理学という演出であるとお伝えしました。まさにこれが世界観です。海外におけるメンタリズムは実に多くの世界観が存在します。不可思議な力があることを演出する超能力的な世界観、霊的でスピリチュアルな演出をする世界観など多種多様です。日本におけるメンタリズム=心理学という世界観が成功したということは、やはり日本人メンタリストの努力のたまものだと感じています。
この世界観はビジネスパーソンにとってもかなり大事です。例えばセールストークにおいても、単に商品の説明をしても人は響きません。もちろん最初からその商品を求めているのであればいいのですが、そのような状態であればそもそも誰がセールスしても結果は同じです。
その商品の性能よりも開発秘話、その商品の特徴よりも開発者の思い、これらのストーリーをセールストークに入れることで、人は想像の幅を広げ、より商品についての理解を深めていきます。その商品自体の説明はその後でも十分間に合います。私たちは幼少のころから「物語」が大好きです。幼少のころに親に物語を読んでもらった記憶が残っている人もいるかもしれません。映画やドラマが廃れることがないのはこれが理由です。物語は世界観を作り出し、世界観は人の心を動かします。