コロナでイベント事業が売上半減した「ぴあ」。ワクチン予約を足掛かりに狙う“次の手”
5月13日に新型コロナウイルスのワクチン接種予約システムを自治体向けに提供する旨を発表したチケット販売大手の「ぴあ」。
「1回の予約受付に際して、同時に数十万件規模のアクセスに耐えうる」チケット販売システムのノウハウを転用しており、早ければ5月中からの稼働開始も想定しているというスピード感も注目され、各種メディアにも取り上げられています。
本連載「ブラック企業アラート」では、「ぴあ」社の公開情報を通して、同社の業績・企業体質を分析します。
直近期の業績を読み解く
2011年3月期以降の財務指標推移をグラフ化しました。売上額(折れ線グラフ)は右の軸、その他利益(営業利益・経常利益・当期純利益。折れ線グラフ)は左の軸にしています。2020年3月期までは売上額も順調に伸び、「好調」と表現して差し支えない状況でしたが、2021年3月期に売上が半減し、大幅な赤字転落となりました。
これは、新型コロナウイルス肺炎の流行により、多くの「イベントが中止」になったことが主な要因です。今回は、より掘り下げていくために20201年3月期について、「3か月ごと」の業績推移グラフを準備しました。
売上推移も、緊急事態宣言の発令状況に応じて推移していることがわかります。具体的には、下記のような流れです。
【2020年4月~6月】
初回の緊急事態宣言でイベント・公演が相次いで中止したことで売上が減少
【2020年7月~12月】
感染者数が落ち着いてきたことによりイベント開催が増え、売上も回復
【2021年1月~3月】
首都圏を中心とした緊急事態宣言の再発令の影響により再度減少に転じた
「集客エンタメ産業」が半分以下に
このような窮状はぴあだけではありませんが、同社は先陣を切って広報・周知活動を実施しています。2021年2月には「音楽、演劇、映画、スポーツ、その他の5つのジャンル」の「集客エンタメ産業」における、
・売上消失額の年間計(2020年2月~2021年1月)
・2019年の市場規模に対する消失割合
の速報値を公表しています。この公表値によると、
【公演・試合等が、中止・延期、入場者制限等により消失した、入場料金の総額】
▲8,600億円(75%減)
【内訳】
音楽:▲3,700億円(88%減)
演劇:▲1,600億円(76%減)
映画:▲1,200億円(46%減)
スポーツ:▲1,300億円(81%減)
その他ジャンル:▲800億円(89%減)
となっており、新型コロナウイルスによって「集客エンタメ産業」が半分以下のサイズになっていることを示しています。