「おい新入社員、初体験の話しろ」憧れの部署は地獄のハラスメント気質だった
「これが東京のマスコミ業界か……と思いました。配属初日から度肝を抜かれましたよ」
そう振り返るのは、土井久永さん(仮名・29歳)。地方大学出身の彼が新卒で入社したのは、雑誌を中心に手広く刊行する中堅出版社。
大学時代からずっと憧れていた出版社。しかも第一志望の編集部署に配属されたということで、土井さんは大喜びだったといいます。
飲み会前に妙な違和感を覚える
「自分に務まるのかは不安でしたが、いい本を作るぞという熱意に燃えていましたね。初日の勤務が終わって、私たち新入社員の歓迎会をやってくれるという流れになったんです」
しかし、会場に向かう段階になり、土井さんはある違和感を覚えました。
「フロアにいるうちの半分くらいの社員が何も言わず、身を隠すように帰っていったんです。歓迎会のはずなのにずいぶん参加者が少ないんだなあと、同期の新入社員たちと話していました」
そうしながら居酒屋に着くと、それまで優しかった上司や先輩の様子が一変したといいます。
「とにかく『面白いこと』を言わないと、会話をしてもらえないんです。上司や先輩から質問をされ、何かを答えると『……で?』の連続。そうして僕らが言い淀んでいると、『お前ら本当つまんねえな!』という罵倒が。反射的に『すみません……』と謝ってもまた『つまんねえ!』と怒られる。最悪の空気です。『どこ出身なん?』という問いに、一体どう面白く返せば良いのでしょうか……」
ゲス過ぎる煽りに反応してしまった
数名の社員がそそくさと帰っていたのは、この空気を避けるためだったんだと合点がいった土井さん。そして新入社員の萎縮が極限に達し、空気が止まったとき、ある先輩社員がこう言ったそうです。
「お前ら本当につまんねえな。……まさか童貞か? 童貞だろ?」
当然答える必要などありませんが、状況を打開したいという思いが先走ったのか、1人の新入社員が「違いますよ! やめてくださいよ」と、つい応じてしまったそう。
「その瞬間、上司と先輩がニヤッとしたのが分かりました。そして、各々が初体験の話をさせられる流れに……。僕が先陣を切ることになったのですが、話し出すや否や『座ってんじゃねえ! 話すときは立つんだよ』というゲキが飛んでくる始末……ゲスすぎる煽りです」