大地震に遭遇したガイド師が、北海道で人気の「乗馬ツアー」を開くまで
突然の帰国、北海道に移住した決め手
地震をきっかけに突然生活が一変し、帰国せざるを得なくなった中川さんだったが、どう考えたんだろうか?
「そんな時、たまたま友人から『北海道利尻島に行ってみたらどうか?』と言われたんです。自然が豊かな北海道はニュージーランドとちょうど緯度が逆なので気候や産業が似ています。友人の中には1年を通してニュージーランドと北海道の両方でガイドする人もいました。たぶん日本にいながらニュージーランドのような生活ができると直感的に思ったんじゃないでしょうか」
気候が似ていてニュージーランドと同じようなライフスタイルを今度は北海道で。
中川さんは新たな地でガイド業をやり始める。そしてそこで地域おこし協力隊募集という機会に、現在の浦河町にやってくることになる。
「決め手は、移住促進を進めたいという街のスタンスと、あとは観光がまだあまり進められていない地域だったのが逆に良かったんだと思います。日高山脈を含め、手つかずの自然が残るこの地域はまだまだ観光資源としては未開拓、だったら自分でやってみたいと(笑)。人は少ないけれども自然との距離が近く、暮らしやすいこの街は自分の条件にはピッタリでした」
そして前段の乗馬ツアーをはじめ、中川さんはニュージーランドで得た経験をもとにこの地にツーリズムの命を吹き込んでいく。
旅行業を持っている社長に直談判
「まずは街を知るためにたくさんの人と会って話を聞き、いろんなところに出かけました。街を知れば知るほど旅人の心にビンビンと訴えるものが出てくるんです。そこでツアーを創ろうと思いました。ただ、日本だとツアーとして売るためには旅行業が必要でしたが自分は持っていません。なので、それを持っている地元の人との協業に直談判に行きました」
その方は、旅行業を営んでいるものの外から人を呼ぶことにはそこまで積極的な活用をしていなかったとのこと。そこで中川さんはこの街のポテンシャルを語り、「魅力的な資源を活かしてツアーをつくり、人を呼ぶ挑戦を一緒にやりましょう」とお願いに行ったらしい。
それがきっかけで、浦河町でのツアー開発が始まり、ツアーを20本も開催したらしい。なかでも乗馬ツアーと並んでおススメは、鷲を観察に行くプログラムだ。
「実はとても貴重な鷲が毎年、浦河にやってくることがわかったんです。それは天然記念物で、毎週調査に連れて行ってもらいました。そこからこれをガイドするツアーを開催することを思いついたんです」
地元の人では当たり前に思ってそうな、その地域の資源を発見して、磨いて、そしてガイド経験を活かして外から人を招く仕掛けを作る。浦河町のありのままを活かした中川さん流の関係人口をつくる誘客施策が始まった。