大地震に遭遇したガイド師が、北海道で人気の「乗馬ツアー」を開くまで
プロガイドとして生計を立てる日々
そんな生活になり、都合、9年4か月、ニュージーランドに住むことになったそうだ。そしてそこで出合ったのがガイド業だった。
「観光ガイド、ドライバーズガイド、バスガイド、ハイキング、ホエールウォッチング、ペンギンウォッチングなど。他にもツアーコーディネートや撮影隊対応、視察対応など、観光の町だったので何でもをやりましたよ」
日本ではまだまだ仕事として確立できていないプロガイドの仕事を、中川さんはニュージーランドに行ったことによって結果的にさまざまな形で吸収して経験を積んでいく。
「向こうでは1人あたりガイド料金数万円ほどするようなものが多いです。例えばドライバーズガイドやバスガイドで330キロを、約5時間ガイドするツアーや、ネイチャー系のツアーは高かった記憶があります」
まさにプロガイドとして生活をしていたことになる。
「ただガイドのトレーニングは本当に厳しかったですね。ただしゃべるのでなく、相手が求めていることを話すということの重要性を教わりました。口よりも相手が何を求めているのかを知る“目”が大事だと。それと海外ではどんなことがあってもボランティアツアーにはせず、きっちりお金を取りますね」
私も日本の観光ガイドの育成に関わる仕事をしているが、ボランティアガイドが主流の日本とはそのプロ意識にかなりの差があると思っている。
2011年、クライストチャーチの大震災
ニュージーランドで順風満帆だった中川さんの生活に突如変化が起きる。それが2011年に発生したクライストチャーチの大震災だった。
「東北の震災の3週間前にクライストチャーチでも震災があり大聖堂は倒壊し、ホテルは大きなダメージを負いました。そして、観光客がぱったり来なくなって、そこからは震災復旧に追われる毎日でした。今後どう生きていくか? ガイド仲間とも話し合っていましたが、徐々に他の仕事へ移る人、国へ帰る人などさまざま出てきました。自分としては育ててくれた会社に恩を返したい気持ちが強かったので、残りたかったんですが、震災でビザが厳しくなり、いよいよ日本に戻らざるをえなくなったんです」