GWにイッキ観したい傑作Netflix4選。梨泰院、ルパンetc.で仕事の悩みが吹っ飛ぶ
『Lupin/ルパン』理不尽な上司との問題を解決したい人へ
フランスの実写版ルパン。ルーブル美術館から「マリーアントワネットの首飾り」を盗む大計画で幕開け。いきなりのド派手な展開で、ルーブル美術館に車ごと突っ込むカーチェイスあり、裏切りあり、胸キュンあり、どんでん返しありのスピーディーでスタイリッシュな大エンターテインメント作品だ。
ルパンを演じるのが『最強のふたり』『ジュラシック・ワールド』のオマール・シー。そう、怪盗紳士ルパンが黒人なんである。
「俺を見くびったな。つまり──俺のことが目に入らない。ヤツらと同じ」
「ヤツら」とは上流階級の人々だ。格差社会で、黒人や移民は個として認識されていない。だから黒人ルパンはヤツらの目に入らず、神出鬼没たり得るのだ。それが本作の鍵。差別する側は、理不尽な差別をしていることすら、自分自身で「見えてない」のだ。
全体を貫くのは、濡れ衣を着せられて自殺した父親の仇を討つために、財閥で権力を持つペレグリニ家と戦う物語。ドローン、ディープフェイク動画、スマートスピーカーなどの現代的なテクノロジーも活用し、目的のためには手段を選ばぬルパンの復讐譚だ。前半5話が配信中。後半5話は、2021年夏に配信開始予定。理不尽な上司との問題を解決したいと思っている人、必見。
【Lupin/ルパン】
出演:オマール・シー、リュディヴィーヌ・サニエ、クロチルド・エム
原作・制作:ジョージ・ケイ
『ザ・イングリッシュゲーム』古臭い組織を変えてきたいと考えている人へ
舞台は19世紀イギリス。主人公ファーガスは、サッカーの才能を買われて、織物工場の職人たちのサッカーチームに入った男だ。ライバルとなるのはアーサー。名門校出身で上流階級チームに所属している。
第1話で、アーサー、めちゃくちゃイヤなヤツなのだ。試合が引き分けで終わる。ファーガスたちが「少し休憩して延長戦をやろう」と言うが、アーサーたちは「来週、再試合だ」と言って譲らない。労働者たちにとって、それは無理な話だ。移動にかかる長い時間、旅費もギリギリ捻出した。全員が再び来るのは不可能だ。
「サッカー協会の会長に決めてもらうか?」とアーサーが提案するが、そのサッカー協会の役員は、アーサーたち。参加している選手が、組織ルールの決定権を持ち、それを都合のいいように扱っているのだ。
アーサーってなんて酷いヤツ、ムキー! と腹が立つが、そこからの展開が凄い。アーサーたちにとって、労働者階級のチームは、「われわれのサッカー」を汚そうとしている存在だ。フーリガンを生み出し、金で選手を買い、コマーシャリズムに堕していく。労働者階級が参入してくることで生じる問題点も描くのだ。
上流階級を単純な敵として描写しない。アーサーが、労働者たちの「現実」をじょじょに知って苦悩していく様子に、どんどん感情移入させられる作りになっている。労働者階級と上流階級が分断されていてもシステムとしてリンクしていることを巧妙な構成で描写し、サッカーというスポーツが分断の懸け橋になりえることを示す。
6話で完結、全281分。しっかりとした気持ちのいいエンディングまでイッキ観してください。古臭い組織を変えてきたいと考えている人、必見。
【ザ・イングリッシュゲーム】
出演:エドワード・ホルクロフト、ケヴィン・ガスリー、シャーロット・ホープ
原作・制作:ジュリアン・フェロウズ、トニー・チャールズ、オリヴァー・コットン
<TEXT/ゲーム作家 米光一成>