東京赤羽の小さなお店が、コロナ禍で「無料弁当」を配り続ける理由
ホームレスの男性が亡くなったと知らされる
2021年を目前に控えた12月28日の夜、公園で配り切れなかったおにぎりを店先に出してみると、おにぎりは1つ残らずなくなったという。それからは、夫でオーナーの保憲さん(68歳)、息子の哲男さん(42歳)と交代で年末年始も店に顔を出し、おにぎりやパン、寝袋や毛布などを毎日店先に出し続けた。
「何とか食べて、とにかく寒い冬を乗り越えて欲しいという思いでした」
しかし年が明けた2021年1月6日、“ばあちゃん”の口から突然の訃報を告げられる。
「よく見かけていたホームレスの男性が、1月2日に亡くなったと聞きました。病気がちだったほかのホームレスの方も見かけなくなってしまったり……。悲しいことが続きました」
最近は若い人が無料弁当を取りに来ることも
橋本一家が悲しみに暮れるなか、1月7日に緊急事態宣言が発令された。それからは毎日営業時間が終わると、家族3人で無料弁当をつくり、店先に置き続けた。店が定休日でも、休むことなくだ。弥寿子さんは無料弁当の提供を続けるうちに、「より多くの人が困窮していることがわかった」と話す。
「最近は学生さんや、30代前後の求職中の方もお弁当を取りに来るようになりました。若い人はバイトをしたくても、バイト先が潰れてしまう。一人暮らしの学生さんは、親も困窮しているから仕送りを頼めないそうです。いまは誰もが困っているんです」
政府の度重なる休業要請や時短要請によって、めぐりや自体も苦しい経営状況が続いている。にもかかわらず、時短営業中も食材の仕入れ量を減らさず、毎日無料で弁当をつくり続けている。店は赤字にならないのだろうか?
「お店はもともと赤字だし、すでに潰れているようなお店だから(笑)。売上のことは気にしていません。時短要請の補償で家賃とスタッフの給料を支払えれば十分。あとは皆が助け合いながら、元気で毎日やっていければいいんです」