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話題の音声SNS「Clubhouse」面白いけど、ネットカーストが透けて見える/常見陽平

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ネット界の主従関係が透けて見える

Clubhouse

多数の有名人が本音で語あり合うroomも少なくない

 とはいえ、長所ばかりとはいえず、色々と気になるところもある。この手のサービスにはありがちかもしれないが、“意識高い系”の巣窟になっているかのような空気を感じた

 彼らのような存在が可視化されるのは、Clubhouseならではの面白さでもある。現状では他のSNSのようにフォロワーを買うことができない一方で、roomのタイトルに「無言」や「ミュート」と掲げて、相互フォローを促すためだけに使われている空間も目立つ

 情報の流れ方が可視化されるのも特徴で、ユーザー同士は必ずしも対等な関係ではない。ツイッター上で“つぶやく人”と“つぶやきをただ見る人”が混在するように、発言力のある人たちの声をただただ聴くのみで、トークには一切参加しない人たちもいる。

 よくよく冷静に観察してみると、雲の上にいると思っていた人が優しく語りかけながら有益な情報をポロッと漏らしてくれたり、フォロワー数を水増ししてくせに偉そうに振る舞う人もいたりと、情報はやはり玉石混交だ。筆者自身、Clubhouseは第一次ブームを逃した一人で乗り遅れた感もあったが、細かな部分に目を向けると、ネット界の主従関係ないしカーストが垣間見えるアプリでもある

ログが残らないことのデメリットも

 Clubhouseは、音声だけのコミュニケーションだからこその難しさもある。そもそも、どれほど話題に夢中になっていたとしても、延々と話し続けるのは意外とくたびれる。

 人の顔や仕草が見えないので、相手とのやり取りには工夫も必要だ。例えば、筆者がラジオ出演する際には、ブースの中でパーソナリティや放送作家が「次は常見さんに振ります」とひそかにサインをくれたり、表情が曇っていれば苦手な話題なのかと気付くことができる。特に、Clubhouse内でスピーカーが議論するような場面だと、場の空気を読むのが難しくなる。

 また、ログを残せないのも必ずしも利点とはいえない。言葉尻を取られてやり玉に挙げられるリスクが少ない一方で、自分がふと失言したときに、反論の証拠を出せない可能性もある。交通事故の目撃者を探すのが難しいように、クローズドな環境で「常見がこんなことを言っていた」と拡散されてしまうと、根も葉もないことであっても言い返せなくなる

 Clubhouse内では相互フォローしたユーザー同士で秘密の会話をできる機能もあるが、誰もが入れるroomの雑談で、思わぬ広がりを見せる場合もある。リスクを考慮して、いかに使い分けるかも課題といえるだろう。

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