根深い「アスリートの性的画像」問題。盗撮でも罪に問えないのはなぜか
開催か延期か大きく揺れる東京オリンピックを前に、女性アスリートに対する写真や動画による性的ハラスメントが、人権問題として大きく報じられています。競技中にきわどいアングルで撮影された、女性アスリートの画像が流出拡散してしまうこの問題。対策はないのか、弁護士で公認会計士の資格を持つ後藤亜由夢氏に聞きました。
訴訟を起こすことはできるのか
2020年11月に日本オリンピック委員会(JOC)らスポーツ関係団体は、女性アスリートに対する性的な撮影被害やSNSへの画像拡散といった被害に対して、共同で対策に乗り出す方針を発表。
これを受けて体操の田中理恵さんやバレーボールの大山加奈さん、競泳の田中雅美さん、ビーチバレーの坂口佳穂さんらが次々とコメントを発表しています。
被写体にされたアスリート本人が撮影者を相手取って訴訟を起こすことはできないのでしょうか。
「競技中の女性アスリートを盗撮した写真に性的なニュアンスが含まれていたとしても、そのこと自体を直接取り締まる法律は現状日本にはありません」
名誉棄損や損害賠償に当たるケースは?
「盗撮については迷惑防止条例で規制されていますが、『通常衣服で隠されている下着又は身体』を盗撮した場合に適用されます。例を出すと、エスカレーターの下からスカートの中を盗撮したような場合です。
競技中の女性アスリートに対する盗撮は、多くはユニフォーム姿なので『通常衣服で隠されている下着又は身体』にあたりません。よって迷惑防止条例が適用されないのです。
とはいえ、撮影者が、アスリート個人がわかるような形で盗撮写真をインターネット上にアップし、かつそのアスリートの名誉を棄損するような卑猥なコメントを付け足して、SNS上で拡散した場合は名誉棄損罪が成立する余地はあります。
あるいは、民事上の責任として盗撮者がアスリートに対して、名誉棄損や肖像権侵害を理由とした損害賠償責任を負う可能性もありえます」