世界で「ワクチン外交」を進める中国。習近平政権の隠れた思惑
次世代デジタル技術「5G」の権益確保も
また、5Gなど次世代デジタル技術において国際的な主導権確保を目指すため、中国は「デジタルシルクロード」構想を表明し、発展途上国のデジタル化で世界をリードしようとしている。
新型コロナウイルスの感染拡大は、発展途上諸国の経済に大きなダメージを与えており、欧米諸国と比べ安価な値段で手に入る中国製の製品は発展途上諸国にとって魅力的であることは間違いない。
習政権もそういった所は熟知しており、コロナ禍の中で世界各国がほしいワクチンで欧米諸国をリードし、これまで以上に中国の影響力を拡大させたい狙いがある。
ワクチンには「人の命を守る」という万民が重視する人道的役割が含まれていることから、現時点において、健康シルクロードは発展途上国から強く歓迎されるものとなっている。
ワクチン外交は今後さらに活発化する
アメリカ合衆国ではようやくジョー・バイデン政権が就任したが、現在のところ中国ほど目立った行動はできていない。それどころか、最大被害国であるため、国内のコロナ対策に時間を割かざるをえず、ワクチン配給において米中の差は歴然したものになる可能性もある。
アメリカや日本など先進諸国の2020年の経済成長率はマイナスが予測されるなか、中国は新型コロナウイルス感染拡大前の水準を上回る2.3%のプラス成長となった。
それは、中国が新型コロナウイルスの感染拡大から一刻も早く抜け出したというイメージを与えることになり、中国による健康シルクロードは今後さらに活発化することが予想される。
<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>
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