たった1人、予算ゼロの人事部が「1年半で68人」も採用できたワケ
コロナ禍では「寄らば大樹の陰」と、就活生のあいだで大手・有名企業に人気が集まっています。ベンチャー企業はますます厳しい採用状況になっているという話も聞きます。特に立ち上げまもないベンチャー企業では、人事・採用の担当者がいないこともあり、新入社員や若手社員がその役割を任されることもあると思います。
今回は、前職ITベンチャー企業で1年間、約70名のエンジニア採用を実現し、現在は株式会社採用モンスターの代表を務める鴛海敬子さんに、ビジネスSNS「Wantedly」を駆使した当時の採用エピソードを紹介してもらいました。今回は前後編の体験談の前編をお送りします。
※本稿は『予算ゼロでも最高の人材が採れるまちがえない採用』(フォレスト出版)を一部編集のもと引用しています
ベンチャー社長「予算ゼロだよ」の一言
私が人事として転職した2社目のアミューズメント企業では、年間の採用予算が1億円近くあり、予算も潤沢にあるなかで新卒採用に携わっていました。ところが、3社目にあたるITベンチャーに転職して社長からかけられた一言が、「予算ゼロだよ」だったのです!
ここからはちょっと長くなりますが、私がたったひとりで、一人あたりの採用コスト3万9725円で、1年半で68人採用したストーリーを回想風にシェアしたいと思います。
採用ってこれくらい泥臭くやらないといけないんだ! というところを肌で感じていただければ嬉しいです。そのあと、実際に行ったことを具体的に述べたいと思います。
「会社説明会やれば集まる」の非常識
前職では2000人規模のアミューズメント系の企業で、新卒一括採用をメイン業務として担当していた私。採用の王道パターンは、「媒体に出す→説明会に呼び込む→面接をする→採用する」が主流だと思っていました。
媒体にお金をかければ人が集まる、集めた人を説明会に呼び込みしっかりグリップすれば採用なんて余裕でできるでしょ! と甘く考えていました。そんな私がメイプルシステムズというITベンチャーで人事責任者としてエンジニア採用を担当することになりました。
入社してすぐに社長に「私、会社説明会すごい得意で好きなんで、そこから応募者流入させて採用でしっかり結果だします!」と意気込んで伝えたところ、「おっしーが思っているような会社じゃないよ、うちは……。会社説明会開催しても人は来ないんです……。媒体にお金もかけられないから、地道に一人ひとりにアプローチして知ってもらわないと、見てもらえないんです……。前の会社のやり方を一旦リセットして考えたほうがいいね」という返答。
漫画のようにガーンってショックを受けて「一体私はどうすれば採用できるの!?」と入社当初から不安に襲われました。前職では採用に自信があり、とくに会社説明会やプレゼンが得意だった私はどうやって自分の強みを発揮していけばいいのか……と悩みました。“お金は使わず、頭と体を使う”、メイプルシステムズでの人事としてのスタンスはなんとなく理解できた入社初日でした。