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空腹で雑草を食べたことも。エンジニアに転身した30代“元船乗り”の半生

学び

独学でプログラミング習得できたワケ

 プログラミングスクール「侍エンジニア塾」の調査によると、プログラミング学習をした人のうち87.5%が挫折するという。遠藤さんは、おまけに独学だ。これほど短期間でプログラミングを習得できたのは、ロースクール時代の経験がきっかけだと話す。

「司法試験に受かるためには分厚い専門書を30冊ほど読みます。しかも、繰り返し読んで頭に叩き込む。この勉強を数年間ずっと続けていたから、プログラミングの本を読んだり、動画を見て学ぶことはそこまで苦ではなかったんです。それに、“ものづくりをしたい”という漠然とした思いを叶えられたので、純粋に学ぶのが楽しかったですね」

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弁護士を目指していたときに勉強していた書籍たち

 その後、噂を聞いた漁師から「アプリで魚を売りたい」と相談を受け、アプリ上で海産物を購入できる決済システムを導入したり、広告機能を入れたりなどし、機能を拡充していく。

独立に向けて、実力をつけていく

 ITを駆使して集客に貢献するも、経営者である父親はあまりよく思わなかったという。

「田舎はやはり新しいものを受け入れない風潮があり、父とはしょっちゅうケンカをしていました。何度話しても埒が明かなかったため、『このままならエンジニアとして独立するしかない』と思い、船員として働きながら、エンジニア向けの案件紹介サービスに登録。さまざまな業務を受け、実力をつけていきました」

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遠藤さんが乗っていた船舶「えばあぐりいん」

 まず利用したのがクラウドワークス。日本最大のクラウドソーシングを謳っていることもあり、案件数が豊富にある。その中でエンジニア歴が少なくても受けられるリーズナブルな業務を選び、スキルを磨いていった。その後、シューマツワーカーやクラウドテックなどプロフェッショナル向けのサービスに移行。4年ほど船員とエンジニアを掛け持ちし、2018年に独立した。

道に生えている草で飢えをしのいだ

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 念願の独立を果たしたものの、仕事は安定せず、不安な日々が続いたという。

 家族の生活を優先するあまり、道の草を食べたり(嘘のような本当の話!)、炊飯器からご飯をよそうフリをしてそのまま戻したりしていた。現在はフリーランスとして働きながら、趣味である釣りをより楽しむために、新たなサービスを開発中とのこと。

「独立当初は大変でしたが(笑)、今は案件紹介サービスや友人の紹介でお仕事をもらい、安心して家族を食べさせることができています。それに何より、自分の好きなことが仕事になっている今はとても幸せですね」

 一時は生活苦にもなった遠藤さんだったが、現在では無事に生活も安定してきたという。これからのフリーランス人生に注目したい。

<TEXT/橋本岬>

IT企業の広報兼フリーライター。元レースクイーン。よく書くテーマはキャリアや女性の働き方など。好きなお酒はレモンサワーです

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