投資ブームでカモられない、お金とは違う“生きるための投資”の話
コロナ禍による世界的不況の影響で、不安を感じている人も多いだろう。景気が低迷している一方で、日経平均株価は先日、29年ぶりの高値2万6000円台を記録した。不安を抱える人たちが増えるなか、個人の株式投資に対するニーズが高まっていることは間違いなさそうだ。
そんななかでまずは投資に関する情報を雑誌や書籍などから得ようとする人もいるだろう。しかし、そんな情報は役に立たないどころか、「初心者用の投資本は投げ捨てたほうがいい」と語るのは、作家、経営コンサルタントの「えらいてんちょう」(矢内東紀)氏だ。
著書『とにかく死なないための「しょぼい投資」の話』(河出書房新社)を発売したばかりの彼に、今回、投資初心者のための思考術について紹介してもらった(以下、矢内氏による寄稿)。
何とか生きていくためにどうするか
新型コロナウイルスが猛威をふるい続け、未来がまったく見通せない世の中になっていますね。今日、今月、今年を生きていくのが精いっぱい、で、将来のことなんて考えている余裕はない、という人も多いと思います。
年金もいくらもらえるかわからないし、不安だから資産は欲しいけれど、もうこれ以上めちゃくちゃ働くのもしんどいし、そもそも定年まで働ける保証もない。起業なんて怖くてできない。なんとか生きていくために投資とかやったほうがいいんだろうけど、投資のことなんて何も知らないし、そもそも元手もない。悩んでいてもしょうがないから、まずは投資初心者用の本でも読んで、そこに書いてあるような株とか外貨取引とかFXとか、そのへんの投資に手を出してみようか。
そんな不安感、閉塞感みたいなものから、言いようのない焦燥感に煽られて、見切り発車で投資に手を出した、という人も多いのではないでしょうか。
とりあえず、いったん初心者用の投資本は投げ捨てたほうがいいと思いますね。いや、それらのすべてが無価値だとは言わないんですが、既存の投資本の中には役に立たないものが相当数あるのです。
あなたが人気YouTuberになるには?
突然ですが、皆さんYouTube見ますよね。私も見ます。私はYouTubeに出るほうでもあり、多くの方にご覧いただいた動画もあります。いまは子供のなりたい職業の1位はYouTuberだそうで、大人も子供も、有名人もそこらへんの人も、猫も杓子も今日からYouTuberという時代です。
どこかで「父さん、会社を辞めてYouTuberで食っていこうと思うんだ」というコピペというか、ネットミームというか、小噺みたいなものを見たことありませんか。どこが面白いかを説明するのも野暮なのですが、人生やけっぱち感、家族置いてきぼり感、父さんYouTube別に詳しくない感、絶対食っていけない感みたいなものがうかがえて、奇妙なおかしみを醸しています。
HIKAKINなり、はじめしゃちょーなり、カジサックなり、誰でもいいんですが、彼らをYouTuber界の頂点にいる層だとします。で、ここで本題に戻るのですが、初心者用の投資の本というのはつまり「あなたがHIKAKINやカジサックになるための本」なわけですよね。で、本の中身はおそらく、HIKAKINのどんな動画が再生されているとか、カジサックのあんな企画がよかった、みたいなことが書いてあるわけです。
これ、意味あると思います? いやもちろん「成功したYouTuber列伝」というタイトルの本ならいいでしょうけど、「あなたが人気YouTuberになるための方法」という本に、HIKAKINやカジサックの過去ヒット企画を並べられてもしょうがないわけです。なぜならあなたはHIKAKINのように、すでに老若男女に絶大な人気があるわけではないし、カジサックこと梶原雄太さんのように、芸人として十分なキャリアや人脈があるわけでもないからです。