就活への違和感から生まれた「#HairWeGo」パンテーンの広告が心に刺さる訳
人事・経営者への調査でわかったこと
近年、「ジェンダーフリー」や「ダイバーシティ&インクルージョン」が注目を集めてはいるものの、こと就職活動においてはLGBTQ+のようなセクシュアル・マイノリティに対して、企業側の配慮や取り組みがまだまだ浸透していない実態がある。P&Gが行なった人事・経営者への調査では「セクシュアル・マイノリティにとってフレンドリーな就職活動のための配慮や取り組みを実施できていない」と回答したのは実に82%に上ったという。
他方、「就職活動で、セクシュアル・マイノリティであることを選考企業に隠したことがある」と回答したLGBTQ+の元就活生は76%に上り、「こうあるべき」「こうでなければ」という風潮が強い日本の就職活動で内定をもらうため、企業から求められる人材に取り繕っている実態が浮き彫りとなった。
こうしたリアルなLGBTQ+の元就活生の体験談やエピソードをもとに、自分らしさを表現できる就職活動を改めて考える機会を発信しようと企画したプロジェクトが「#PrideHair」であった。
「LGBTQ+の方々がどうしたら、ひとりひとりの個性を表現して就職活動ができるのかという視点に立って考えたプロジェクトでした。セクシュアル・マイノリティに対して偏見を抱くのではなく、寛容的に接して個性を尊重するような配慮や取り組みを行う企業が少しでも増え、またテレビCMやWebムービーを通じて、当事者の方の実体験を伝えることで、LGBTQ+を取り巻く現状について気づきを与えられたらと思っています」
言葉尻ひとつにも細心の注意を
社会的なテーマを取り上げた広告やキャンペーンを行う場合、どうしても「炎上と隣り合わせ」というリスクがつきまとうだろう。なぜ、パンテーンはリスクを背負ってまで社会に訴えかけるようなメッセージ性の強い訴求を行うのだろうか。
「一番は“覚悟”があるかどうか。中途半端な気持ちではなく本当に社会課題と向き合い、より良くしていこうとする想いを持っているからこそ、社会的なテーマに切り込んだブランド広告を行なえる。もちろん、どこまでいってもリスクはあるので言葉尻ひとつ取っても、細心の注意を払って決めるようにしています」
最後に今後の展望については「『#HairWeGo』を通じて、社会が少しでもより良い方向へ前進できるように貢献したい」と話す。
「ブランド理念を体現し、消費者とのエモーショナルな繋がりを作り出すために、パンテーンとして何ができるかをこれからも追求していきたいですね。売上を追うような短期的施策とは別に、『#HairWeGo』は中長期的視点を持って行う取り組みなので、生活者が求めるものを理解し、時流を読みながら今後も尽力していきたい」
パンテーンのメッセージ性の強いブランド広告はとても印象に残る。今後はどのような社会的テーマを取り上げて展開していくのか、注目していきたい。
<取材・文・撮影/古田島大介>