『鬼滅の刃』ブームの背景に「細やかな創意工夫」アニメ評論家に聞く
巣ごもり需要を象徴するヒット
緊急事態宣言下の東京都内の書店でコミックスの品切れが続出する事態となっていたが、任天堂『あつまれ どうぶつの森』などと同様に、コロナ禍での巣ごもり需要を象徴するヒットという印象もある。
劇場版アニメのヒットに対して、「映画館で上映される映画作品が少ない」「アニメを見る時間が増えた」という意見も散見されるようだ。
「そのような外的要因もヒットした原因のひとつでしょう。これまでの少年ジャンプのバトル漫画のヒット作との共通点はたくさん指摘されすぎなほどされていますが、複数人いる敵幹部と順番に戦っていく『鬼滅の刃』の構成は、ジャンプの王道的な作品だと思います」
そんなわかりやすい安心感のある展開が、かえってコロナ禍でいい感じにハマったということか。
細やかな創意工夫でできている作品
興行収入などの記録を打ち立て、まさに社会現象となった『鬼滅の刃』。例えば『エヴァンゲリオン』などのように、従来のアニメ作品を変えるような大きな影響を与える作品にまでなっていく可能性はあるのだろうか。
「アニメとしては決定的に新しいものはありません。ただ、原作よりも大胆なアクションのおもしろさが強調されており、エンターテインメント性が増しています。3DCGと手描きの共存が精度の高いかたちで徹底されており、それが画面をチッリにしています。手描きの着物の柄や3DCGによる必殺技の錦絵的な表現などを見ればわかる通り、丁寧な仕事と細やかな創意工夫でできている作品だと思います」
続編アニメについても期待が高まっているが、延命措置を行わず人気連載マンガが最終回を迎えた。
「いまはコンテンツの寿命が延びているので、『原作マンガの連載が終わることが、作品のビジネスチャンスの終了ではない』ということは言えると思います」とのこと。
今後火がつきそうな作品として「同案多数と思いますが『呪術廻戦』」と述べる藤津氏。TBS系スーパーアニメイズム枠でアニメが放送中なので、興味のある方はそちらもチェックしてみてはいかがだろうか。
<取材・文/伊藤綾>