20代で借金50億円を抱え、開き直った。ばんからラーメン“独自の経営戦略”
ラーメン店は日本全国に数多くあり、とりわけ都市部の“ラーメン激戦区”では各店がしのぎを削っている。毎年、新規開業するお店がある一方、売上が伸びずに暖簾を下ろすラーメン屋も数知れない。そんななか醤油ととんこつを使用したコクがたっぷりの「超濃厚スープ」、そして徹底的にこだわり抜いた、各メニューに合わせて開発した「麺」が特徴の「ばんからラーメン」は根強い人気を誇っている。
「東京豚骨拉麺ばんから」「旭川味噌ラーメンばんから」といったラーメン店を運営する、株式会社花研(本社/東京・南池袋)代表取締役の草野直樹社長に人気ラーメン店を作るコツや独自の経営術について聞いた。
銀行からの命令で一気に債務超過に
草野社長の父親(光男氏)は、ロードサイドを中心に展開する人気チェーン「くるまやラーメン」の創業者。ラーメンチェーンのパイオニアとして知られ、FC(フランチャイズ)形式で店舗数を拡大して一世を風靡した。
学生時代からくるまやラーメンでアルバイトし、ラーメン屋という職種に関わってきたが、父親から他社で働いてみることを勧められ、卒業後は九州の飲食店で下積みをした。その後、父親からの呼びかけもあり、くるまやラーメンへ戻ることとなった草野社長。その頃はメインバンクを中心に事業資金の融資もあり、年間直営店100店舗出店計画のスタートが決まっている、好調な時期だった。
ロードサイトの店舗を中心に地方都市へも出店攻勢をかけており、西日本を統括していた名古屋営業所は約100店舗を管理していた。管理職だった草野氏は取締役となり、名古屋営業所に異動して店舗運営に携わることになる。
そうして事業自体は好調に進んでいたが、突然メインバンクから監査法人が送り込まれた。長期の計上として予定していた各種事業にかかる経費などを一気に決算処理することを強行され、一気に債務超過という状況に陥ってしまう。
20代で借金50億円を背負い、どん底に…
「突然担当者から『債務超過で業績が著しく悪化している』ことの責任を取る形で、当時代表であった父親の代わりに、息子の私が社長をしてくれと言われた。いくつか個人保証にも判子を押すことになりました」
そして、メインバンクは約束していた融資にストップをかけ、代わりに会社更生法の申請を迫ってきたのだという。
「このタイミングで融資をストップされると、人件費だけで約8000万円ほどショートしてしまう。ラーメン屋以外に葬儀や旅行などの別事業を行う子会社を6社営んでいたので、そこの資金をあてれば、十分まかなえる。これくらいならやり直せると、私は思っていましたが、会社の口座の管理自体も、メインバンクの決済で動く状況になってしまっていて、もう独断では動けない状態になっていた。『はめられた。詰んだな』と落胆しましたね……」
1998年5月、くるまやラーメンは会社更生法を申請。事実上の経営破綻だ。当時、27歳の草野氏はくるまやラーメンの社長だったが、一挙に50億円の借金を背負うことになる。
「就職もできない。マンションのローンも遅滞し、税金も支払えない。ありとあらゆるもの全てが差し押さえされ、身動きが取れなくなってしまった。ただ、落ちるところまで落ちると、逆に開き直れるんですよね(笑)。もう一度、再起をかけるなら絶対に“ラーメン”しかないと考えていました」