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韓国で5万人が反政府デモ…文在寅大統領を悩ます「三重苦」

ビジネス

金正恩は「南北友好の象徴」を爆破

 近年の南北関係は“金正恩>文寅在”の構図で進んでいる。例えば6月16日、北朝鮮は南北友好の象徴だった開城市にある南北共同連絡事務所を爆破。南北共同事務所は2018年に3回にわたって開催された南北首脳会談の合意によって設置されており、文大統領にとっては顔に泥を塗られた格好となった。

 北朝鮮が爆破したきっかけは、韓国の脱北者団体が5月31日、「金正恩は偽善者だ」「2017年2月にクアラルンプール国際空港で殺害された金正男氏は、弟である金正恩によって暗殺された」など、金正恩氏を批判する内容のビラを気球に乗せて飛ばしたことにある。

 しかし、南北共同連絡事務所を爆破した背景には、金正恩氏の文大統領への不満もあるはずだ。すなわち、トランプ大統領と金委員長は3回も会談を重ねたものの、結局米朝交渉は停滞。

文大統領を「なめきっている」金正恩

朝鮮半島

画像はイメージです

 北朝鮮は宥和政策を堅持する文政権に仲裁役を期待したが、思うように進展が見られないことから韓国への不満を強めてきた。要は、金委員長は文大統領が強硬姿勢に転換することはないと分かっており、文大統領は金正恩に足下を見透かされているのである

 銃撃事件でも、金正恩氏が謝罪する書簡を送った後に北朝鮮は国営メディアを通して韓国を改めてけん制する声明を発表。文大統領を「なめきっている」金正恩の思惑が読み取れる。

 韓国の次期大統領選挙は2022年3月である。大統領の任期は1期5年であるため、文政権はあと1年半で終わることになるが、少なくとも残りの期間はこういった構図が続くことだろう。金正恩としては「韓国が強硬姿勢に出ることはないだろうから、常にボールはこっちにある」という認識で、いろいろと仕掛けてくる。一方、文大統領としては北朝鮮への対応に加え、反政府デモ、コロナ対策と三重の悩みを抱えて政権を運営せざるを得ない状況である。

<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>

国際政治学者。首都圏の私立大学で教鞭をとる。小さい頃に米国やフランスに留学し、世界の社会情勢に関心を持つ。特に金融市場や株価の動きに注目し、さまざまな仕事を行う。100歳まで生きることが目標

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