韓国で5万人が反政府デモ…文在寅大統領を悩ます「三重苦」
トランプ大統領の新型コロナ感染が判明し、10月5日にスピード退院したものの、今年11月に行われる米大統領選挙の行方が世界的に注目されている。一方、我々日本に近い朝鮮半島では、依然として不穏な情勢が続く。
退陣を求める反政府デモに5万人
9月22日、韓国北西部の小延坪島(ヨンピョンド)付近で不法漁業の取締りをしていた漁業関係の公務員の韓国人男性が海に飛び込み、北朝鮮側に向かって泳いでいたところ、銃撃されて死亡する事件があった。延坪島では2010年11月にも北朝鮮からの軍事的砲撃で韓国人4名が犠牲となった。同海域周辺では両国の境界線主張が異なっており、常に緊張状態にある。
朝鮮労働党の金正恩委員長は同事件について謝罪する書簡を韓国側に送ったが、北朝鮮のトップが韓国にこういった対応を取るのは異例である。だが北朝鮮はその後、射殺された同男性の遺体捜索を行う韓国に対して領海に入らないよう警告。依然として不穏な情勢が続いている。
この事件を巡っては文大統領に対する反発も高まっている。韓国の保守層を中心とする政党や団体は「自国民が殺害されたのに文大統領は北朝鮮に対して何もしないのか、何も言わないのか」「文大統領は韓国人か」といった声を上げ、ネット上でも文大統領の“対北宥和姿勢”を批判する書き込みが多く見られる。
北朝鮮、反政府デモ、コロナの三重苦
新型コロナウイルスの感染拡大による雇用悪化や不動産価格の高騰などで文大統領に対する国民の風当たりは強い。例えば、韓国での8月15日は日本からの解放を記念する「光復節」の日にあたるのだが、ソウル中心部では文大統領の退陣を求める5万人規模の反政府デモが行われた。
また、韓国最大手通信社の「聯合ニュース」などが報じた内容によると建国記念日「開天節」にあたる10月3日にも、複数の保守団体がデモを決行した。これは韓国ソウルの中心地で行われたのだが、当初、警察は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、デモの禁止を命じていた。しかし、保守団体がソウル行政裁判所に申し立てた結果、自動車を活用した「ドライブスルー・デモ」という条件付きで開催を認めた。
今でも文政権は新型コロナへの防疫措置を名目に、10人以上の集会の禁止を通告し、ソウル中心部の光化門(クァンファムン)広場などを警察車両やバリケードで徹底的に封鎖する措置を取っている。