「吉野家」の看板はなぜオレンジ色なのか?きっかけはアメリカ視察
「黒い?野家」に反応した意外な潜在顧客とは?
「黒い?野家」に対するメディアやSNSの反応はさまざまです。
「あの?野家がおしゃれカフェみたいに変身!」
「その辺のカフェよりクオリティが高い!」
「ケーキやドリンクバーまである!」
「各席にUSBポートやコンセントがあってWi-Fiも飛んでいる!」
――などなど、ターゲットである若い男女を中心に大好評です。驚いたのは、まったくノーマークだった60~70代のシニア女性が来店したことです。この世代の女性は、若い世代と違って牛丼チェーンに入ることに抵抗感があるので、従来の?野家ユーザーではありません。
「黒い?野家」が?野家デビューとなったシニア女性も多く、実は彼女たちは?野家で食べてみたいというニーズを密かに持っていた潜在顧客だったのです。シニア女性以外にも、今まではなかった女性のおひとりさま利用やテイクアウトも増えており、「黒い?野家」は高い収益を上げています。
同じ?野家チェーンでも、看板の色や店舗の空間デザインをがらりとイメージチェンジしたことで、潜在顧客のニーズを掘り起こすという副次的効果を生み出すことに成功したのです。
こうして「黒い?野家」が大きな話題になり成功しているのも、「オレンジの?野家」の認知度が日本全国に浸透していたからこそ。その対照的な存在としての意外性が際立つのだと思います。「黒い?野家」はまだまだ進化するかもしれない未知のパワーを秘めた存在です。大切なのは、「オレンジが決まりだから、ほかの色なんてありえない」と、ひとつのブランドイメージに固執するのではなく、自らのブランドイメージの殻を打ち破っていく革新的なチャレンジ精神だと思います。
<TEXT/大西良典>
■ 大西氏がデザインを担当した有名外食チェーン店
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