バターサンドが大ヒット。急成長のお菓子ベンチャーに聞く「勝因と失敗」
期待のブランドが失敗したことも
BAKEは現在、9ブランドのお菓子を展開している(2020年9月時点)。しかし、過去には失敗して消えていったブランドもあるという。
「原宿の竹下通りを出たすぐ横にパフェスタンドを運営していたんですが、1年以内で撤退。原宿カルチャーにマッチしたデザインの訴求も行なっていましたが、出店場所と商品との相性が良くなかった。さまざまなチャレンジをして『出店する場所の大切さ』を改めて学びましたね」
ブランドストーリーを創り込んで、美味しさや世界観を伝えるだけではお客様に選ばれないという。
「PRESS BUTTER SANDの次に私が手がけた『Chocolaphil™』というガトーショコラのブランドがあります。コロンビア産の厳選したチョコレートを使用しており、ストーリーのある素材から得たインスピレーションをデザインに落とし込みました。
ここ数年、チョコレート業界は生産者さんや労働環境に伴う社会問題を背景に、商品で応援したり想いを継続的に伝えたりといったことが重要になってきています。そういったより細やかなコミュニケーションとブランドの世界観とのバランスがうまく取れなかったこともあり、自由が丘店は9月で閉店することになってしまいました」
コロナでリアル店舗の価値を見直す
新型コロナの影響で苦境を強いられている製菓業界だが、BAKEも緊急事態宣言期間は店舗を全て閉店せざるを得ず、売上が大きく冷え込んだ。
「コロナが流行したことで『リアルとオンラインの親和性』をより考えるようになりました。各メーカーが試行錯誤を繰り返すなか、BAKEもお客様とのコミュニケーションを考え直し、リアル店舗の価値を再構築したいです。しばらく休業していた店舗が再開した時に、あるお客様から『BAKEのお菓子を買えるようになったことで、平常な日常に戻って嬉しかった』と声をいただいたんですが、お菓子は普段の日常を取り戻してくれるものだと改めて感じました」
6月にはコロナになる前から企画していたオンラインショップを急ピッチで立ち上げたBAKE。今後は災害時にでも食べられるようなお菓子など新しい層へのアプローチも試みているという。これからどんなお菓子ブランドが生まれるのか、さらなる活躍を期待したい。
<取材・文・撮影/古田島大介>