どうなる民泊?「新法ショック」を生き抜くコツをプロに聞く
貸し手としてもセキュリティ面の対策が必要
――物件の中には南京錠型のキーケースをマンション外部に取り付け、鍵の受け渡しをしていたり、管理者が不在の施設など、いわゆる「違法民泊」の問題も取りざたされています。法律の施行に伴いその影響というのは感じていらっしゃいますか?
近江:施行される直前に、大手のサービス「Airbnb」が違法民泊と思われる物件を多数削除したのは、目立つ影響のひとつですね。政府も各都道府県の警察に対して、違法民泊の取り締まりを強化するよう促したりと、対策に乗り出しています。
――近江さんは法律が成立する以前から、法律に則ったかたちで民泊施設を運営されていますが、現状をどうお考えですか?
近江:そもそも民泊新法は以前から審議されていて、成立も昨年6月でした。民泊という言葉が注目され始めたのは昨日今日という話ではありません。民泊事業を続けるのであれば、「Airbnb」から削除されるなどの事態にならないよう、審議が始まったころから認可に向けた準備が必要であったと思います。
具体的なセキュリティ対策とは?
――国内の民泊では主に、一般の方の関心は「空き家や空き部屋を誰かに貸して、活用できる」という点だと思います。見知らぬ誰かに貸すという上では、セキュリティ面でどのようなことに気を付けるべきなのでしょうか?
近江:例えば、利用者に部屋を壊されたとしても、きちんと法律に従ったかたちで訴えるしか手段はありません。事前にリスクを避けようとするなら、宿泊費とともにデポジットを預かるなどの対策も必要だと思います。
――リスクとしては窃盗被害なども想定されますが、そのような場合に備えた具体的な対策はあるのでしょうか?
近江:事前にできるのは、例えば、掃除をし終わったあとに部屋の写真を撮影しておくという方法ですね。ドライヤーなど細かなモノについても置き場所を決めておけば、万が一の場合には、相手へ訴える材料になります。
――実際に、近江さんの運営されている物件では、どのような対策を講じられているのでしょうか?
近江:国内で民泊を利用される方を想定すると、やはり外国人観光客が主なターゲットになります。そのため、ルールをきちんと伝えられるよう、例えば、中国語や英語など複数の言語でまとめたマニュアルを作っています。
一般の方も、これから参入されるのであれば、相手との文化の違いを受け入れるという姿勢が必要だと思います。
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民泊新法の施行により、誰もが宿泊施設を運営できるようになった一方で、物件の管理や近隣への騒音など、セキュリティ面の対策もより強く求められるようになりました。思わぬトラブルに見舞われぬよう、事前にさまざまな角度からリスクを想定しておくことも必要です。
<取材・文・撮影/カネコシュウヘイ>
【近江幸生】
エアーグローバルエージェンシー バンコク・オフィスのCEO。ASEAN全域のタイ、カンボジア、ベトナム、ミャンマー、ラオス及び日本全土で合法民泊を企画運営。facebookはこちら。