コロナ下でも攻める「アパホテル」、社員の年収は高いのか?
「Go Toトラベル」キャンペーン実施中であるものの、都道府県をまたぐ移動を堂々としにくい状況下で、旅館・ホテル業界への打撃が深刻化しています。
「帝国データバンク」(2020/7/17)によると、2020年上半期の旅館・ホテル・簡易宿所の倒産は80件にのぼり、既に昨年実績(72件)を上回っています。そのうち、新型コロナウイルス関連の倒産は37件で、影響は大きいです。
ただし、本連載「ブラック企業アラート」では少しでも誰かの励みになるよう「苦境の中でも好調な業種・企業」にスポットを当てて調査していきます。そこで今回は、新型コロナウィルス軽症者向け宿泊所として一部施設を有償で提供し、現在も新規ホテル建設・開業を継続している「アパホテル」について詳しく調べてみました。
業績:手堅い推移。中長期目標も達成
アパグループは非上場企業なので、原則として財務諸表の公表義務はありません。ただ、公式サイトにて2015年11月期以降、自主的に売上高・営業利益・経常利益・当期利益額を公表しているため、この値を用いてグラフ化してみました。
あくまでも本グラフは「2019年11月期=2019年11月末」までの業績であるため、2020年上半期の状況は各種ニュースなどで間接的に把握するのみとなっていますが、直近5期については新規開業やホテル買収で、売上・利益が順調に伸び、非常に安定した状態です。
また、アパグループの場合、中長期計画を前倒し気味に達成している点が特徴的です。2015年4月から開始した「SUMMIT 5-Ⅱ」では、提携ホテルを含むネットワーク客室数10万室を目標に掲げ、2020年3月末時点で10万756室と、目標を達成しています(※ニュース リリースより)。
また、もともと「SUMMIT 5-Ⅱ」では「2020年度ホテル部門売上高1,200億円」という数値目標を掲げていたのですが、これについても2019年度に売上高1,371億円を記録し、早期に達成しています。掲げた数値目標を夢物語にせず、着実に達成する姿勢が見てとれます(※ニュース リリースより)。
新型コロナ患者受け入れをめぐる賛否両論
なお、2020年上半期においても、首都圏を中心とした積極的な新規開業の勢いは衰えていません。
7月28日には六本木エリアにリニューアル1棟+新規5棟の6棟建てのホテル「アパホテル〈六本木SIX〉」を開業し、続いて8月7日には「アパホテル&リゾート〈両国駅タワー〉」を開業しています。
また、周知のとおり、アパグループは全国各地の一部ホテルを新型コロナウイルス無症状者及び軽症者向け宿泊療養施設として各自治体へ有償で提供しています。税金で借り上げてくれるのだから、ホテル苦境の現在、アパ側のメリットも少なくないでしょう。
こちらは「一棟借り上げ」形式で、療養者と一般の利用者が同じ施設を同時に利用せず、通常営業を再開する場合も十分な期間を空け、消毒を実施した上で再開するとのことです(※プレスリリース2020/7/15)。
アパグループ代表の元谷外志雄氏は安倍総理とたいへん親しく(後述)、施設提供を「政府から直談判された」と代表自身が明かしています。風評被害を恐れずに受け入れたアパを賞賛する声がある一方で、税金で借り上げる案件を親しいアパに回した“トモダチ優遇”だとの批判もあるようです。