『万引き家族』、物議を醸した本作が本当に描きたかったのは?
その目には見えない絆を体現することに成功したのは、俳優陣の熱演があってこそ。リリー・フランキーのハマり役はさることながら、注目はケイト・ブランシェットをはじめとするカンヌの審査員たちが絶賛したという女優たちの演技です。
その筆頭といえば、やはり樹木希林。入れ歯を外して挑む役者魂はもちろん、監督があてがきで脚本を書いたというだけあって、この役を演じられる女優はほかにはいないことは誰が見ても明らかなほど。
そのほか、是枝組初参加となる安藤サクラと松岡茉優も負けず劣らずの存在感を発揮。20代、30代の女優を牽引していく女優として一歩リードした感のある2人だけに、彼女たちの放つ言葉や表情、そして涙にいたるまで、この作品にもたらす大きさを感じずにはいられません。
見極めるべきは作品としての本質
いまの日本社会が抱える闇や貧困問題など、政治的なメッセージや告発の意味があるのではないかというところに焦点が集まり、作品を超えたところで物議を醸している本作。公開と同時期に幼児虐待の痛ましい報道やリアル万引き家族逮捕のニュースなど、予想以上に現実とリンクしてしまったところもあったものの、監督は公の場で「この作品は社会的な問題を喚起するために作ってはいない」と話しており、自身の公式サイトでも一連の騒動に対してコメントを寄せています。
それらを要約するとまた監督の意図と異なる可能性もあるので、そこはぜひ自分の目で確かめてもらいたいと思いますが、真意が簡単にゆがめられてしまうネットニュースなどに振り回されることなく、まずはすべての雑念を取り払い、純粋な気持ちで作品を鑑賞することをオススメしたいです。
そのうえで、自分がどのように感じたのかを大切にしつつ、家族の絆とは何か、そしていまの私たちがすべきことは何なのかを自らに問いかけてみては?
<TEXT/志村昌美>
【万引き家族】
監督・脚本・編集:是枝裕和 出演:リリー・フランキー 安藤サクラ 松岡茉優 / 樹木希林 配給:ギャガ 大ヒット公開中!