『万引き家族』、物議を醸した本作が本当に描きたかったのは?
いまの日本映画界をもっともにぎわせている作品といえば、カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞した是枝裕和監督最新作『万引き家族』。
日本人監督としては今村昌平監督『うなぎ』以来、21年ぶりとなる快挙に、普段はあまり映画に興味がないという人でも、高い関心を寄せているはず。
家族の絆を繋いでいたのは犯罪!?
高層マンションの谷間に取り残されているのは、いまにも壊れそうな平屋。そこには、治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)の夫婦と息子の祥太(城桧吏)、そして信代の妹である亜紀(松岡茉優)が転がり込んで暮らしていた。
彼らが頼りにしていたのは、平屋の持ち主である初枝(樹木希林)の年金。とはいえ、それだけで足りるわけもなく、必要な生活品は治と祥太が万引きしながら日々を過ごしていた。
そんなある日、近所の団地で寒さに震えている傷だらけの少女と出会い、治は家に連れて帰ってしまう。信代は娘として育てることを決意し、家族は笑いの絶えない毎日を送っていた。しかし、ある事件をきっかけに家族の秘密が明らかになることに……。
まさに是枝映画の真骨頂
是枝監督といえば、“カンヌの常連”ともいわれるほど、『誰も知らない』(’04)など同映画祭のコンペティション部門には5回も出品されてているだけに、今回は満を持しての受賞。
そんなパルム・ドール効果もあり、興行収入は公開後わずか7日間で10億円を突破し、2018年の実写邦画では最速の記録を達成することに。動員数においても、6月14日時点ですでに100万人を超えており、現在は何週連続で首位をキープできるかにも注目が集まっています。
今回のテーマとなるのは、これまでも是枝作品でたびたび取り上げられてきた“家族”。『そして父になる』(’13)では取り違えられた子どもと両親を描き、親子として過ごした時間と血縁のどちらを選ぶのかという問いを投げかけ、『海街diary』(’15)では異母妹を家族として受け入れる姉妹の姿を描いて大きな共感を呼んできました。
そんな風にさまざまな家族のあり方と真摯に向き合い続けてきた是枝監督だからこそ描けたのが、本作に登場する「犯罪でしかつながれなかった家族」ですが、着想を得たのは親の死亡後にも家族が年金を不正受給していた事件。
それに加えて、震災のあとからしきりに叫ばれる家族の絆にも疑問を抱いていたことが、「家族とは何か?」について掘り下げるきっかけにもなったとか。「血のつながり=家族の絆」と思いがちな私たちにとっては、絆の本当の意味を突き付けられる作品です。