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がん患者4000人を診断してわかった「現代人の生きづらさ」の正体

暮らし

<ほとんどの人が意識していませんが、人は「must(~しなくてはいけない)」と「want(~したい)」の両方の自分を持っています。そして、現代人の多くは「must」が強くなっているあまりに、心を苦しめてしまっている>

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※イメージです(以下同じ)

 そう語るのは『他人の期待に応えない』(SBクリエイティブ新書)を上梓したがん患者専門の精神科医・清水研氏だ。

 他人の目から見れば順調な生活を送っている人でも、人知れず生きづらさを感じている。そんな多くの人が「want」の自分で生きられない原因は何なのか? 4000人以上のがん患者を診てきた同氏に聞いた(以下、清水氏寄稿)。

「want」の自分と「must」の自分

 誰しもが持つ「want」と「must」の相反する2つの自分。2つの自分が存在するというと、「いや、自分は自分1人でしかない。もう1つの自分なんて存在しない」と奇異な感覚を覚え、反論したくなる人も少なくないと思います。

 しかし、「want」の自分と、「must」の自分は存在するのです。「want」という単語には「欲しい」という意味があります。さらに、want to(動詞)とすると「(動詞)したい」という意味を持つ言葉になります。つまり、「want」の自分というのは「~したい」「~になりたい」「~でありたい」という自分自身の強い意志や願望を発信する自分です。

 一方、「must」という単語には「~しなくてはいけない」という意味があります。この場合の「~しなくてはいけない」という気持ちは、自発的なものではなく、他の誰かの目や社会的規範を意識して発意されています。つまり、「must」の自分というのは、他者の目や気持ちを意識し、「want」の自分を律したり、行動を制御する自分なのです。

「want」の自分の生き方は自分本位の生き方、「must」の自分は「人からどう思われるか、社会的規範と照らし合わせてどうか」ということを基準にした生き方と説明すると、理解がしやすいでしょうか?

「must」の自分が徐々に形成される

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 人は皆、まっさらな状態でこの世に生を受け、徐々にいろいろな感情を育んでいきます。物心がつく頃までは、まだ「悲しい」「頼りたい」という気持ちのまま母親に甘えようとし、自分がこうしたいという「want」によって動機づけられる自分だけしか存在しません。

 しかし、両親からのしつけや、社会生活を営むために他者との関わりが増えるにつれ、「弱音を吐いてはいけない」「もっと努力をしなくてはいけない」「立派な人間にならなくてはいけない」という、もう1人の自分、すなわち「must」によって動機づけられている自分が形成されていくのです。

 また、仕事で結果さえ出せば、出世さえすれば、会社に尽くせば、幸せになれるというのも「must」です。あまりにも当然のごとく受け入れられているがゆえに、私たちは何の疑いもなくこのようなことを信じ込んでいますが、本来そこには何の因果もありません。なかには、親や家族、友人から認められなければいけないという「must」に縛られることで苦しんでいる人もいます。

「must」の自分も、「want」の自分もどちらも自分であることは間違いがありません。しかし、その在り方は人によってそれぞれで「want」に動機づけられてのびのびと生きている人もいます。しかし、「want」と「must」が自分の中で闘っていて「want」が「must」に支配されているような生き方は苦しいのです。

他人の期待に応えない ありのままで生きるレッスン

他人の期待に応えない ありのままで生きるレッスン

年間200人、合計4000人以上のがん患者を診てきた精神科医が伝えたい「折れない心のつくり方」

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