居眠りを理由に公開処刑。北の独裁者・金正恩の“冷酷な素顔”6つのエピソード
エピソード3:独裁者としての権力固め
金正恩は権力を盤石なものにするにあたり、粛清を実行しました。これは日本とは全く異なった政治体制が背景にあります。選挙の結果で与党と施政者が変わる日本など民主主義国とは違い、北朝鮮は朝鮮労働党の一党独裁。独裁国家では、選挙でなく粛清によって権力を固めるーーこれは歴史上くりかえされてきたことです。
「新米独裁者にとって最も危険な時期は、その権力を手にしてから最初の二年間だ。その間に、自分に忠誠を誓う者と切り捨ててかまわない者を判別しなければならない。もともと権力を狙っていた者たちが巻き返しを図るとしたら、おそらくその二年間に動く。新米独裁者が前任者の側近を引き継いでいる場合はなおさらだ。金正恩は政権に就くと、父や祖父のやり方を踏襲した。彼の地位を支える力のある一握りのエリートの富と幸福を守り、高めることから始めたのだ」
「潜在的な政敵や批判派を最初に排除しておくことの重要性は、新米独裁者にも簡単にわかる」
「安全を約束された者は一人もおらず、それは移行期を乗り切る支えとなった者たちでさえ例外ではなかった。いや、そういう者こそが危うい立場にいたのである」
エピソード4:人々に恐怖を植え付ける粛清方法
一口に粛清と言っても、追放、軟禁、投獄、処刑、暗殺など、様々な実例があります。金正恩が行った粛清の中には、非常にバイオレンスなものもあったようです。
金正恩体制において初めに粛清された人物である李英浩(軍総参謀長)。2012年に彼の消息が消えたあと、日本でいえば防衛大臣にあたる人民武力部長(現在の人民武力相)に昇進した玄永哲大将にも同じことが起こりました。
「二〇一五年前半、その玄永哲が姿を消し、命令不服従と反逆の罪で処刑されたとの報道が出た。韓国諜報機関によれば、彼がはたらいたとされる多くの不正のなかには、金正恩が話しているときに居眠りをしたというものもあった。彼は静かに消されたわけではなかった。対空砲で公開処刑されたのだ。遺体は四散したことだろう。他の当局者たちは、その後の会議で目を見開いておこうと思ったに違いない。」