2度のリストラを経て起業、東大卒の女性代表に聞く「料理人のサブスク」という内食の形
リストラに次ぐリストラを経験
「ゴールドマン・サックス時代は資産運用している人にアドバイスする仕事でしたが、アライアンス・バーンスタインでは、企業の年金を運用している仕事を任されました。企業分析は前職時代に培ってきた経験があったので、投資顧問会社として求められる成果を出すことができた。仕事も順風満帆に進み、結婚を機に子育てをするというライフスタイルを思い描いていた時期でしたね」
だが、仕事もプライベートも順調に進んでいた井出氏に、またしても不運が襲う。2012年にアライアンス・バーンスタイン本国の運用パフォーマンスが著しく悪化し、事業の悪化に伴う日本法人閉鎖が告げられたのだ。
事実上の解雇通達により、2度のリストラを味わった井出氏。会社都合でなくなってしまった仕事に対し、理不尽な思いを抱き、ライフプランを台無しにされたと悔やんだ。
「これから子育てをしたいと考えていた時の出来事で、正直落ち込みましたね。ただ、子供を産んで温かい家庭を築きたかったので、次の新天地を探すことに。やがて、ボストン・コンサルティング・グループ(以下、BCG)から打診があり、女性の出産に理解ある職場環境だと伺ったので、入社を決めました」
子育てママ同士の同僚と起業を志す
BCGに転職してからは産休を挟みつつ、時短勤務として働く日々を過ごした井出氏。この時に初めて、「起業」という選択肢があることに漠然と興味を持ち始めたと話す。
「ゴールドマン・サックス時代や大学時代の知人が起業したことは知っていました。会社に雇われて仕事をするのではなく、自ら起業して仕事をすることに、なんとなくイメージが湧いてきた時期でした。また、子供を持つことで、子育ての大変さも初めて身にしみて感じました。子供を持つ前は、母親の大変さがわからず『すごいな』と傍観していましたが、子供の容態や一挙手一投足など、コントロールできない側面を知ったことで、何かを犠牲にして生活する母親の苦労を体験しましたね」
仕事と子育てのバランスや、育児の食事や献立作りなどのアイディアを、よく同僚のママ友同士のランチで意見を交わしていたという。その中で、同じ境遇ということから親交を深めたのが飯田陽狩氏であり、のちにシェアダインを共同創業することとなる。ママ友同士の出会いが、起業するきっかけとなり、2017年5月に会社登記するに至ったのだ。
「出産を機に子育てを始めたことで、日々の食生活を見直す必要がありました。これは、子育て中の飯田も同じ考えを持っており、『食の専門家』が作り置きしてくれるマッチングサービスがあれば、同じように悩みを抱える子育てママの役に立てるのではと考えたのです。事業計画書は飯田が構想し、私はアナリストの経験を生かして、市場ニーズや企業分析を担当し、サービスリリースを目指しましたが、最初1年間は全然軌道に乗らなかった」