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コロナ禍で仕事がない芸能人の補償はどうなる?

コラム

 新型コロナウイルスの感染拡大で、芸能人も大打撃を受けています。NHKの大河ドラマ『麒麟(きりん)がくる』の収録中止を筆頭に、多くのドラマ、バラエティ番組やロケ番組なども撮影できない状態が続いています。

NHK

日本放送協会放送センター ©Rs1421 CC BY 3.0

 番組の収録や舞台やライブが中止・延期されたことで、収入源を絶たれた芸能人も少なくないでしょう。人気バンドKing Gnuの井口理さんは2020年3月28日に「すでにみんな1ヶ月仕事を失ってるんだから一刻も早く補償をしましょうよ!」というツイート。

 芸能人が生活に困った場合、どのような補償があるのか。弁護士で公認会計士の資格を持つ後藤亜由夢先生に話を聞きました。

ほとんどの芸能人は個人事業主

 非常に特殊な環境とも言える芸能界ですが、そもそも芸能人はどういった位置づけになるのでしょうか。

「事務所との契約形態によります。契約書上、雇用契約であれば芸能人は労働者ですし、業務委託契約やマネジメント契約であれば芸能人は個人事業主です」(後藤弁護士、以下同)

 芸能人の場合は、「個人事業主であるケースが多い」と後藤先生。芸能界で一般的な「マネジメント契約」は、個人事業主である芸能人が、稼いだ額の何割か(契約による)を、マネジメント料として所属事務所に払う、という契約です。
 

事務所側は、補償する義務がない?

 そして、芸能人に限らず、個人事業主(フリーランス)には休業補償がない場合がほとんどです。

「芸能人が個人事業主として事務所と契約している場合は、補償を定めることは通常ありません。仮に番組やイベント出演がなくなったとしても、事務所側は法的には補償する義務はないです」

 ただし、芸能事務所の一部では、仕事が多くても少なくても固定のギャラを払うとか、最低いくらのギャラは払う、という契約をしているところもあります(これは“給料制”と呼ばれたりしますが、サラリーマンに払う給料とは違います)。その場合は、仕事がなくても、契約したギャラは払う義務があるはずです。

 ちなみに、コロナ禍で政府が事業主に支給する補償は、当然ながら、個人事業主の芸能人も対象になります(後述)。芸能人が「補償を!」と悲鳴をあげているのは、こういった公的補償の意味でしょう。

契約書

※イメージです(以下同じ)

 一方、数は少ないものの事務所と雇用契約を結んでいる芸能人は、サラリーマンですから、仕事が減っても急に給料を減らすことは法的に許されません。

「雇用契約であれば、補償制度と呼ぶかはさておき、労働者なので労働基準法で守られています。休業する場合も、本来は休業手当が支給されます」
 ただ現実には、他の業種でも、「コロナのせいで休業したのだから会社の責任ではない」と休業手当を払わない企業が続出して問題になっていますが…。

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