コロナ禍で中国が挑発的行動を繰り返す理由。日本の安全保障にも危機
中国にとっては今がチャンス?
つまり新型コロナウイルスによって、日本の安全保障を担保する米軍の働きに支障が生じているのだ。本来、ウイルス感染とは人々の命を脅かすものだが、それが日本人約1億3000万人の安全保障に被害を及ぼす可能性がある。
中国による海洋行動は長年のものだが、今まさに米軍をけん制するチャンスと捉えているのかも知れない。中国は、新型コロナウイルスの感染が米本土や前方展開する米軍にまで拡大し、政治的にも、軍事的にも機能低下する隙を突く形で、日本をけん制する行動を取っている。
新型コロナウイルスは、大国間の軍事覇権争いにも影響を及ぼしている。仮にこのまま新型コロナウイルスが米経済を蝕むならば、中国の挑発的な海洋行動はいっそう激しくなる恐れがある。
そして、それは日本のシーレーンに直接影響を及ぼす。シーレーンとは、簡単に言うと、日本が石油の9割を依存する中東からインド洋を抜け、マラッカ海峡から南シナ海、日本へ通じる海洋の生命線である。ここには読者の皆さんが普段乗る愛車やバスを動かすための石油を運ぶタンカーが毎日通る。
数年前から漁師の間には不安の声が
また、日本へ輸入される食料品を運ぶ船もここを通る。中国軍の南シナ海、また沖縄以東の海域での活動がこれまで以上に活発になれば、それだけ現地の海洋秩序は変わる。今のように船が順調に航行できなくなったり、いきなり意味の分からない拿捕に遭うかもしれない。
沖縄本島からはるか西にある宮古島や石垣島など先島諸島では、漁師から「安全に漁ができない」という不安の声が広がっている。数年前に筆者が学術研究の調査で宮古島や石垣島を訪れた際、現地の漁業関係者から聞いた声だ。なぜかというと、中国の漁船が近海に大量に現れ、好き勝手に海産物を獲っているのだ。