開成→東大法→メガバンクの29歳が「やりがい転職」でうつ病になった理由
遅れる給料の支払い。「今月もまだ入っていない……」
銀行員時代には味わえないやりがいを感じていた桑田さん。しかし、思わぬ落とし穴がありました。給料が銀行員時代の半分になっただけでなく、経理専門のメンバーがいないせいか「支払いが遅れることもあった」と言います。
それでも「こんなにやりがいのある仕事はないし、もらえないわけではないから」と放置。そんな桑田さんを、さらなる悲劇が襲います。
「地域密着型の団体だったため、毎日のように地元の人との飲み会があります。そうすると街の人間が全員知り合いのような状態になってしまって、ちょっと出歩いただけでも『桑田君、昨日◯◯にいたよね? ××さんから聞いたよ~』と、あっという間に情報が広がるんですよね」
「無論、それが地方のコミュニティの良さでもあると思います」と続ける桑田さん。
「でも僕は、そんな濃密すぎる人間関係がだんだん息苦しくなってきてしまったんです」
ついに精神的に限界が……
いつ入るか分からない給料、あまりにも近すぎる人間関係。悩んでいた桑田さんはある日、事務所で仕事をしている最中に涙が止まらなくなったそう。慌てて病院に駆け込むと、うつ病と診断されました。
「『人を笑顔にする』ため転職したはずなのに、いつの間にか自分自身が笑顔を失っていたんです。それに気がついた時にはもう遅かった。泣く泣く仕事を辞め、現在はもう一度自分を見つめ直すためにアメリカの大学に留学しています」
自嘲するように呟く桑田さん。「やりがい」は必要だけれど、「やりがい」だけでは生きていけない。そう身につまされるエピソードでした。
<取材・文/田丸こーじ イラスト/zzz(ズズズ)@zzz_illust>
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