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“逆輸入俳優”大谷亮平「20代の僕はまだ何もしていなかった」

暮らし

――富男を演じるうえで核にしていた部分はなんでしょうか。

大谷:債務者一人ひとりに対して、あからさまな表情を出さないようにしました。

 それぞれが生きてきた様だったり、このお金をいったいどうするのかといった思い、感情は、確実に持っているのだけれど、それを極力表に出さないように。そこはブレないようにしました。

 ラスボス的な渋川(清彦)さんに対しても同じです。対峙する場面で、絶対ほかの債務者に対するものとは違う気持ちがあったと思いますが、出さないようにしようと。まあ、出ちゃってましたけどね(笑)。

 でも意識的には出さないようにしていました。唯一それを出せるのが、弟が絡んでいる場面で、そこだけは多少気持ちが漏れているのを自覚しながらも、そのままやっていました。

僕はこの役が好きだったし、しっくりきてた

大谷亮平

――役者として、気持ちを持ちながらも表には出さないという演技法はいかがでしたか?

大谷:やっているときは、必死でした。とにかくブレないようにと。感情を出したくなるときも多かったので、自制していくのは難しいことでした。ただ、試写で完成したものを観たときに、あ、こんな感じだったんだと。

――こんな感じだったとは?

大谷:感情が多少表に出ているのは分かっていましたが、自分の表情までは把握していませんでした。その、出てしまっていた部分を、綾部(真弥)監督が生かしてくれていた。もう1回やり直そうというより、ありかなというスタンスの監督だったんです。

 現場でも、気持ちが出ているなと感じたときには、大丈夫かどうか監督に聞いていましたが、「そういうところがちょっとずつ見えていくというのは全然ありだと思います」とおっしゃっていました。完成作を観て、現場で生まれたものを生かしてくれたと感じました。

 それに、この役がすごくやりづらかったり、無理をしていたとしたら、不安もあったかと思いますが、僕はこの役が好きだったし、何かしっくりきていたんですよね。無理をしていない分、そこから生まれ出たものに、変な嘘や、富男として外れるものはなかったと感じました。

主人公と自分に共通していた部分

大谷亮平

――富男が好きだというのは、どこから来たんでしょうか。

大谷:僕、人をすごく見るんです。韓国に住んでいたことも関係しているかもしれません。いろんなところに行くと、日本人とは全然違う感覚を持った人に触れることがあります。

 ちゃんと人を見ておかないと、選択を間違ってしまう。そういうことって海外生活をしているとあることだと思います。だからか分かりませんが、僕はすごく慎重に人を見て、自分と関わる意味や理由を探ってしまう。ちょっとよくないところですかね(苦笑)。

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