ブラック企業だったサイボウズが「働き方改革」を実現できた舞台裏
会社組織の再建に必要な「ザツダン(雑談)」
会社組織の再建のために、山田氏は「ザツダン(雑談)」と呼ばれるラフな会話をベースにしたコミュニケーションを社員一人ひとりと行った。個人と向き合うことで、お互いが考えること、やろうとしていることを汲み取り、モチベーションの管理や何でも言える関係性作りを目指したという。
「マネジャーが考えることに、共感してもらえているかが大切。そのためには、上司であるマネジャー自身が、部下との距離を縮めるために、積極的なコミュニケーションを図ることです。また、上司部下の関係によらず、社内の情報をオープンにし、共有することで、社員の心理的安全性が保たれるとも思います」
いわゆる「ピラミッド型組織」だと、トップダウンで意思決定がなされる。それはつまり、上層部や中間管理職しか知らない情報があるということ。都合のいい情報は伝達し、部下に知られたくない情報は隠す体質は、昨今の変化の激しい市場に対応できない。
他方、サイボウズと違って、会社の風土的にピラミッド型でトップダウンでの意思決定を求められる組織において、マネジャーは何を意識すべきなのだろうか。
情報をオープンにする覚悟を持てるか
「たとえば会社を創業した社長自身が、業績がただ上がればいいと思っているワンマン経営者だった場合、その会社はどうしようもないと思うし、すぐに転職したほうがいい。ただ、そうでない場合、組織を変えたいマネジャーは意思決定権の有無にかかわらずに、情報をフラットにすることから始めるべき。また、部下に思い込みや『こうあるべきだ』という慣習を押し付けず、一方通行なコミュニケーションにならないよう注意する。中間管理職自身が変われば、生産性が上がっていくし、情報を共有しておけば、若い世代のアイディアを会社の経営に生かすこともできる」
著書『最軽量のマネジメント』には、徹底的に社内の情報をオープンにすることで、マネジャーの仕事の負担を減らすことに言及している。
どの仕事に長けていて、誰に任せれば成果を上げることができるのか。マネジャーは、チーム状況を的確に把握し、意思決定することが重要な仕事だ。意思決定権があるからと、権力を振りかざしたり、部署の空気が悪くなる情報を隠したりする昭和のマネジメントスタイルは、時代遅れになると言っても過言ではない。