全ハリウッドが揺れた降板騒動も…「世紀の誘拐事件」映画化の結末
ビジネスマンたるもの、おそらく誰もが「億万長者になりたい!」という野望を一度は抱いたことがあるはず。
とはいえ、彼らは夢とお金だけを持っているわけではなく、あらゆるリスクも抱えているもの。そこで、オススメしたい映画は、大富豪の真実に迫った『ゲティ家の身代金』。
「世界一裕福な個人」石油王ゲティとは?
世界初の億万長者であり、アメリカ人石油王のジャン・ポール・ゲティは、いまや「世界中の金を手にした」といわれるほどだった。そんなある日、孫のポールが何者かに誘拐され、1700万ドル(約50億円)もの身代金を要求されてしまう。
50億ドル(約1.4兆円)の資産を持つゲティにとって、払えない金額ではないにも関わらず、支払いを断固拒否。しかし、離婚でゲティ家を離れていたポールの母ゲイルには、支払うことはできなかった。そこで、ゲイルは息子を救出するため、誘拐犯だけでなく、大富豪とも戦うことを決断。そこには、驚くべき事件の結末が待っていた……。
もともと裕福な家庭に育ったジャン・ポール・ゲティは、石油事業で大成功を収め、1966年には「世界一裕福な個人」としてギネスにも認定されたほどの人物。
とはいえ、富を得た華やかさの反面、一族のなかでの争いは絶えず、さらに自殺や薬物中毒死、不審死などの不幸も相次ぎ、そのひとつがこの“世界一有名な誘拐事件”なのです。
ゲティVS母親VS誘拐犯の緊迫感ある交渉術
それだけでも、お金が引き起こす恐ろしさを感じずにはいられませんが、一度ハマると抜け出せないのがお金の魔力。
劇中では、ゲティの異常なまでの守銭奴っぷりも描かれていますが、億万長者ならではの常人には理解しがたい行動の数々を目の当たりにすることになります。身代金でさえメリットなしでは支払わない姿には、ある種の恐怖すら感じてしまうほど。とはいえ、そこにこそ億万長者で居続ける“秘訣”を垣間見ることができるのです。
「支払いに応じれば、ほかの孫も標的になる恐れがある」という言い分も一理あるものの、孫たちの身を案じているのか、それによって脅かされる自身の資産を案じているのかは、ゲティのみぞ知るところ。母親にとっては、本当の敵は誘拐犯ではなくゲティなのではないかと感じさせるような、三者三様の緊迫感に満ちた交渉術は、最大の見どころです。
今回、冷酷非情なゲティを圧倒的な存在感と迫力で演じているのは、本作でアカデミー賞歴代最高齢となるノミネートを果たした88歳の名優クリストファー・プラマー。とはいえ、もともとこの役はケヴィン・スペイシーが演じたことで話題となっていたのを覚えているという人もいるはず。