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業績好調なはずの「セブン-イレブン」が大量閉店する必然的理由

ビジネス

1000店閉鎖・立地変更の引き金は?

 人件費増によるフランチャイズオーナーの収益悪化が顕著であり、その支援拡大を行う必要が出てきたことが、1000店閉鎖・立地変更の背景にあります。フラインチャイズ店舗の利益の増加よりも人件費の増加のスピードのほうが速く、オーナーの収益性が悪化しているという事実は、セブン&アイHDの本社も認めています。

 そのため、支援の一環として、これまでは24時間営業のフランチャイズオーナーのみに適用していたロイヤリティの優遇(ロイヤリティ料を2%引き下げる優遇措置)の裾野を広げる予定であることを発表しました。

 24時間営業を行っていないオーナーに対してもロイヤリティの優遇措置(ロイヤリティ料を1%引き下げ)を行うことにしたのです。しかし、その結果、セブン&アイHD本社としては年間100億円の利益喪失となり、これが不採算店や直営店の早期閉鎖計画の発表につながったと考えられます。なお、100億円の利益喪失とは、年間営業利益が約4100億円のセブン&アイHDにとっては、2%の影響度と計算できます。

将来は国内からアメリカにシフトも

国別比率

 国内では人件費増を背景にフランチャイズオーナーの優遇拡大を余儀なくされているセブン&アイHDは今後どうなっていくのでしょうか。実は、セブン&アイHDのかなりの収益源が北米エリアにシフトしています。営業収益は、2016年2月時点では約67%を日本国内が占めていましたが、2019年2月は約56%に減少し、代わりに北米が2019年2月時点で約42%を占めるに至っています。

 営業利益は北米は22%(約900億円)を占めています。これは前述のイトヨーカドーなどスーパー事業の営業利益(約210億円)の4.3倍に相当し、百貨店事業の営業利益(約40億円)の24倍に相当しますので、国内のイトーヨーカドーや百貨店よりも、北米コンビニ事業のほうがかなり魅力的な事業であることがわかります。

 また、セブン&アイHDは、2017年に米スノコLP社のコンビニエンスストア事業の一部(約1100店舗)の買収も行っており、今後は国内事業ではなく北米事業を中心とした海外事業に積極的に投資を行っていくものと考えられます。

<TEXT/小森ほうめい>

元外資系企業勤務。企業経営、企業買収業務を専門に行う。累計10万人以上の国内外の会社経営に携わる。海外約30か国以上の参加者へ講演も実施

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