「団地ブーム」で若者も住みたがる現在。団地の魅力を専門家に聞いた
若年層も注目する、団地の魅力とは
今回の取材で伺ったのは、照井さんの住まいでもある神代団地(つつじヶ丘)。改札を抜け10分ほど歩くと突然、住宅街に広大な団地群が現れる。各棟の間は広くもうけられ、開放感のある光景が広がっていた。
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――神代団地には初めて訪れたのですが、歩いてみると想像以上に若い人が多く感じます。
照井:最近は子持ちの方が増えていますね。家族連れの方とご年配の方が多く住んでいます。
――若い人にも団地が注目され始めているのは何故でしょうか。
照井:団地の本来の価値が見直されているのかなと思います。平成の中ごろまでは老朽化で取り壊しを控えた団地が数多くあって、“古臭さ”とか“ゴーストタウン”とか、そういった負のイメージが人々に浸透していました。しかし、最近では取り壊しも減り、公団がリノベーションに積極的に力を入れはじめたこともあり、住まいとしての魅力が再び高まっているんです。
――団地の魅力とは、どういったものですか。
照井:なんといっても窮屈さのない、ゆとりのある敷地です。これは容積率(敷地面積に対する建築延べ面積)にも現れていて、例えば一戸建ての場合はおよそ80%ですが、神代団地はたった51.4%(建設当時)です。ゆとりある生活ができるのは団地の特権です。都内では唯一残された低容積率の住宅街かもしれません。
団地は子育てに最適。「住み団」のススメ
広大な敷地に恵まれた団地は、まさに都会のオアシス。近年では、「自分らしい暮らし方」を求めて団地に入居者も増えているそう。
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――照井さんは、団地に実際に住む「住み団」を提唱されていますね。
照井:団地と聞くとためらいの残る人も多いと思いますが、「いざ住んでみると快適だ」ということが広まってくれたら嬉しいです。内装も綺麗ですし、外見リフォームや遊具を取り替えたりと、屋外環境整備に力を入れている団地も増えてます。
入居手続きも印鑑証明や保証人がいらなかったり提出する書類が少なかったりと、簡単なんですよ。
――ゆとりのある敷地も、子育てに適しそうな気がします。
照井:今日、子育てのアルバムを持ってきたんですけど……。(アルバムをめくりながら)外に出て子供と遊んでいると、近所の方が集まってきたり、子供同士が芝生で遊んだり。それに団地の中には四季があるので、春にはお花見をして秋には紅葉を楽しむ。こういうことって、今どき普通の住宅地だとできないですよね。
――確かに団地でしか味わえない体験かもしれません……。
照井:加えて団地は、玄関が階段に面している「階段室型」のものが多いので、上下階の住民と仲良くなりやすいです。コミュニティが生まれやすいのも魅力のひとつです。
――ちなみに「階段室型」の建物が多いのはどうしてですか。
照井:通路に面する部分が少なくなるように設計されてるからなんです。マンションなどの横移動式の通路だと、部屋の片面が人の目にさらされちゃいますよね。
公団は入居者ができる限りプライベートな空間を確保できるように試行錯誤していました。スターハウスもその一例です。『日本懐かし団地大全』では、住まいのために公団が工夫を凝らした物件を網羅しているので、ぜひ手に取ってみてください。