就活セクハラ被害者が語る、恐ろしい面接官「ラブホに行こうよ」
面接官という立場を利用される恐怖
内藤:でもわかります。面接という場、相手が面接官という立場になると、そうなってしまうかもしれないです。
笹川:はい。ただ、改めて落ち着いて考えてみて「もし今、この人とラブホに行って就職できたとしても、就職後も上手く利用され続けるに違いない」と思い、断ろうと思いました。ただ、相手もずっとしかめっ面で圧力をかけてきました。私自身、気が強いほうではないので、面接官の圧を受けて、とても怖く、正直頭の中は真っ白でした。
でも、「どうにかこの場を回避しないと」と思い、いろいろ考えました。「失礼します」と言って、一人で店を出ようかしましたが、個人情報も全て知られているし、相手も酔っていて何をするかわからない。どうすれば、丸く収められるかを必死に考えていました。いろいろ考えたのですが、最後は「もう時間も時間だし、終電が近づいているのでどちらにしろ今日は行けません」と伝えました。
そしたら、ついに相手も「そうなの、じゃあ仕方がないね、今日はここまでにしよう」と引き下がってくれました。ただ、切り抜けることができたと思って安心したのもつかの間、店を出て、帰る時に肩を掴まれて一言「期待しているよ」と。
内藤:そんなことを言われたのですか。忘れられないですよね……。
笹川:当時、その場から解放された瞬間、本当に屈辱的な気持ちになり、泣きながら帰ったのを覚えています。その後、その人と会うこともありませんでしたが、相当引きずりましたね。
親にも相談できず殻に閉じこもっていた
内藤:当時のこと、伝えずらい部分もある中で、ありのままのお話をありがとうございます。5年ほど前のことですが、今思い出しても相当ショックな出来事ですよね。
笹川:はい。ただ年月が経って少しずつ傷が浅くなっていったように思います。当時は、親にも相談できず殻に閉じこもってしまいました……。
就活に対して前向きになっていた矢先に起こった出来事だったので、急に絶望の淵に叩き落とされたような感覚でしたね。
内藤:ひどいですね……でも、今回こうしてインタビューを受けてくださったのには何か理由があるのですか?
笹川:同じ思いをする人が少しでも減ってほしいと思っているからです。というのも私自身、例の事件後にイライラが止まらなくなり、何かできることはないかと思い、「Yahoo!知恵袋」で相談をしたのですが、返ってきたのが「証拠も何もないので、泣き寝入りするしかない」という回答でした。
確かに証拠もなかったですし、仕方のないことなのですが、後になってとても後悔しました。当時、もし自分が就活セクハラについて知っていれば、何かしらアクションできたかもしれないと思いました。
<取材/内藤光希 文/橋口和奈 イラスト/笹川めめみ>
【笹川めめみ】
エッセイ漫画家。1992年生まれ。関西在住。高校卒業後、就職活動を経てブラック企業に入社。精神疲労し、1年近くニートをしながらインスタグラムで自身の体験を綴ったエッセイ漫画を描き始める。現在は印刷会社で一般事務をしている。リアルな体験談がコミカルに書かれた漫画が大人気。インスタグラム(@mememis888)フォロワー数は3万人