男性育休「義務化」が議論に。期間は?契約社員でも大丈夫?
2019年6月、自民党国会議員の有志55人が集まって「男性の育児休業義務化」を推進する議連が発足した。
これまでも「育児・介護休業法」などの法律で、育児休業の制度や休業中の手当などの制度が定められてきた。だが、育児休業はあくまで従業員が自主的に「申し出た」場合に利用できる制度であって、義務化されていたわけではない。
男性が育児休業をするときのポイントとは――。「育児休業はどうせ取れないとあきらめるのも、育児休業は権利だから当然取得できる、という態度もよくない」と語るのは、育児休業に詳しいリクルートワークス研究所の大嶋寧子主任研究員だ。法律的には「権利だから当然取得できる」にもかかわらず、色々と気を使わないと心証が悪くなる、というのが日本企業の現実らしい。
育児休業は最長2歳まで
そもそも、育児休業はどれくらいの期間、取得できるのだろうか。
「育児・介護休業法では、1歳までの子どもを育てる男女が会社に申し出た場合に、育児のために休業できるとされています。さらに、保育園に入所できないなどの事情がある場合には、最長で子どもが2歳になるまでの期間、休業できます。また両親ともに育児休業を取得すると、特例として1歳から1歳2か月まで期間を延長できる制度もあります(パパ・ママ育休プラス制度)。その場合、育児休業給付金の受け取りの延長も認められるので、経済的な負担も軽減されます」
また、正社員と正社員以外で、取得する権利は差があるのだろうか。
「男女ともに、いわゆる正社員などの働き方であれば育児休業を取ることができます。また、契約社員やパートなど有期雇用契約で働く労働者の場合も、2つの条件が満たされていれば、取得が可能です。1つ目は申し出た時点で、今の事業主に過去1年以上継続して雇用されていること。2つ目は、契約が更新される場合も含めて、子どもが1歳6か月になるまでに雇用契約が満了することが明らかでないことです」
ただし、育児休業は労働者が会社に申し出た場合に休業できる制度であること、休業中の手当は雇用保険から出ることから、フリーランスなど企業と業務委託契約を結ぶ働き方の場合、残念ながら育児休業制度はない。
不利益な扱いは禁止されているが…
また、昨今は育児休業の取得が要因で、会社とトラブルに発展するケースも多いと聞く。
「法律上のルールはあります。育児休業の申し出や取得などを理由に、解雇や降格をしたり、人事考課での不利益な評価を行うなど、不利益な取り扱いをすることは法律で禁止されています。とりわけ、育児休業の申し出や取得などが終了してから1年以内にこうした取扱いが行われた場合は、育児休業等が“きっかけ”になっているとみなし、原則として法律違反とする政府の通達もあります。
ただこれだけでは、会社で長く働いて行く上で絶対にマイナスが生じないかどうかまでは、見通しづらいのも確かです。たとえば育児休業の数年後、配属先の上司が男性の育児休業に理解がない場合はどうでしょう。法律違反になるような差別はなくても、同期よりも働く意欲が低いとみなされたら? これから長く働いていくことを考えた時に、『何が起こるかわからない』と、疑心暗鬼になるのも無理はありません」
これでは、男性が育児休業の取得を取りにくい状況は変わらない。
「企業によって男性が育児休業を取りにくい理由には違いもあるので、簡単には解決できませんが、育児休業を取っても男性のキャリアが長期的にもマイナスになることはないと、企業側が方針をはっきり示すことが、不安を打ち消す第一歩になると思います」
「権利だから当然」は心証が悪い
それでは男性の育児休業取得が今後、義務化された場合、会社とモメないで、うまくやるにはどうしたらいいのか。
「介護や病気などと違って、育児休業は、あらかじめ、ある程度の時期がわかっている休業です。時期を逆算して、休業しても業務に支障が生じないために何が必要かについて、上司と話し合いをすることが重要でしょうね。会社とは事前にしっかりと意思疎通して、コミュニケーションを細かく取っておくべきです。
男性だけでなく、女性にも言えることですが、育児休暇は権利だから当然取得できるという態度では、休業中に仕事を肩代わりしてくれる人や業務の進行を管理する管理職の心証は悪くなります。権利としての休業は取得するけれど、同時に、業務に支障がでないよう最大限努力するという姿勢を見せることが、大切だと思います。会社の先輩や知人で育児休業を取得した人に話を聞いて、その人がどう対応したかについて聞いておくと、トラブル回避に役立つと思います」
当然の権利である育休を、もっとあっさり取れる時代が来るといいのだが――。
<取材・文/永田明輝>