井岡一翔4階級制覇の裏で…ボクシング業界と戦った男
日本の選手は「もっと自由になって」
とはいえ、山口さんや、長年協力関係にあった高山勝成選手(36)の海外での功績を受け、海外に活躍の場を求める選手も増えるなど、日本ボクシング界の流れも少しは変わりはじめたように思えます。山口さんはその行く末をどう思っているのでしょうか。
「正直なところ、あんまりこうあるべき、こうなってほしいというのはないかなぁ。あえて言うのであれば、もっと自由になってほしい。フリーでやってもいいし、ジムに所属してもいい。なんなら一国一コミッションなんて言わずに、国内にいろんなコミッションができてもいいんじゃないですかね。少なくとも本人のやりたいことが制度によってできない、というのはなくなってほしいです」
山口さん自身の今後の展望はどういうものなのでしょうか。
「特にこれといって自分がどうなりたい、というのはないですね。目の前のことを一生懸命、今も昔もやってきたので。しかも最近はジムが近所の集会所みたいになっていて、子供から大人まで、いろんな相談事が持ち込まれて大変なんです(笑)。
ただ、ボクシングがらみで一つあるとすれば、オリンピックを目指している高山勝成のサポートはしていきたいですね。もともとヤツが最初にJBCに引退届を出してから練習場所を提供したり、協力してきたから付き合いは長いんです。そんな高山は、僕の勧めで2017年にプロをやめて、その後アマチュアに転向するという面白い展開になっています」
20代に「嫌いな人間と、おる必要はない」
高山選手のアマチュアボクシング界入りは当初「プロの排除」を明記したアマチュア規則をによって阻まれていました。しかし、2018年6月から始まった山根前会長の退任騒動によって、アマチュアボクシング界を統括する日本ボクシング連盟の執行部が刷新。風向きが変わります。
同年10月9日には高山選手のアマチュア登録審査委員会が開かれ、満場一致で日本ボクシング連盟への登録が認められることになったのです。
「まったく前例がなかったので、高山のアマチュア挑戦は正直、難しいと思っていました……。でもうまくいった。アイツやっぱなんか持ってるんやろなぁ。誰もやったことがないことへの挑戦がどうなるのか、楽しみなんです。最後まで応援しようと思っています」
最後に山口さんに悩む20代読者に向けたメッセージをいただきました。
「お金が大事だという人がいるけど、お金なんて見方や使う場所が違えば全然価値が変わってしまう。そんなことじゃなくて、自分がやりたいと思ったときにやりたいことやってほしいです。あとは時間を大切にする。人間、誰しも平等に24時間しか時間が与えられていない。それなのに、嫌いな人間と一緒におったり、やりたいことをやらないで悩んでいるのはよくない。自分の人生なんだから思ったようにやった方がいい。ちゃんとやっていれば、結果はあとからついてきますよ」
<取材・文/小林たかし>